※少々暴力表現注意
※本編との繋がりはありません、一応パロ扱い





「いっ、あ゛…!いだいっ、風介ぇ!」

右手でヒリヒリと熱を持った腹部を抱えるように押さえながら 髪を鷲掴んで歩く風介に逆らおうとするが、容赦なく引っ張られ体力の擦り減った俺の身体はただ引きずられるだけだった。頭皮の痛みを軽減させようと縺れる脚を何とか張ろうとするのだけれど、どうにも力が入らずにがくりと膝が折れる。ただ黙って歩く風介が向かっているのは風呂場だった。頭はガンガンと警鐘を鳴らすのだが、振り切る体力はこれっぽっちも残っていない。これからされる事を知っている身体は、鳥肌が立ち汗が滲んでいた。風呂場は、マズい。


「厚石と楽しそうに話をしていたね。一体何を話していたの?」
「やっぱり君達は仲が良いんだね」
「晴矢、浮気なんてコトしたら どうなるか解ってるよね?」
「何とか言いなよ、ねぇ!」

きっとそんなような事を言っているんだろう、また。俺には風介の声が聞き取れなかった。ざぶざぶと波打つ水音が鼓膜を叩く。髪を掴んだ風介の手が力一杯動かされて、俺の顔が水をはった湯舟を出たり入ったりした。前にも何度か同じことをされたことがあった。今回が初めてじゃない。最初は水を飲んでしまわないよう息を止めるように努力をしていたが 今日は湯舟の淵に顔を打ち付けられて、思わず口を開けてしまって息を吸い込んでしまった。鼻や口からがぼがぼと水が入る。気管に入ってむせている間も待つことなく水に沈められる。そして引き上げられる。乱暴に、めちゃくちゃに。苦しいとか、そういう次元じゃない。もう、何がなんだか、

「あ゛っふう、ぅすけっ らあ゛、っ!」
「苦しい?苦しいね晴矢、」
「がほっが、げほっげほ うぶ、っ」
「私も苦しかったよ、厚石と晴矢が仲良く話しているのを見ていて」
「ぶ、ぇほっ、がふっあ゛、」

だんだん指先の感覚がなくなって、湯船の淵を掴んでいた手が、多分解れた。苦しい、このまま死んでしまうんじゃないかというほど、苦しくて、息が出来なくて、髪を掴む風介の手が 氷のように冷たくて、だんだん、ぼうっとしてきて、ああ このまま死ぬのか、いや、死なないな、死ねないや。死ねないんだ。








喧嘩、したんだ。
風介が俺に「茂人ともう話さないで」って言ったんだ。俺たち3人は同じ職場の同僚で 、良く3人で呑みに行ったりしてて、仲が良かった。特に俺と茂人は幼馴染で昔から友達だった。それを知っている風介が今になって突然そんな事を言うのが不思議だったし、そんな事言われても茂人と話さないなんて事出来る訳がなかった。
「何でだよ、そんな事出来るわけないだろ」そう言うと風介は「良いからもう話すなと言っているだろう!」と怒鳴った。俺の肩をがしりと掴んで、その表情は怒ったように見えたから、俺も苛立った。「ふざけんな!勝手なことばっか言ってんじゃねぇ!」「何故だ!何故茂人と仲良くするんだ!」「何でって、友達だからだろうが!」肩を掴む風介の手を振りほどいて、本格的に言い争いになった。
「君、まさか浮気しているのか」ついに風介がそんな事を言い出して、いよいよ本当に風介が何を考えているのか分からなくなってきた。怒りと混ざって冷静さを失っていたけれど当然反論して、でもあまりにも風介が確信したかのように攻めてくるから、ついヤケになって「そうだな…茂人の方がお前よりよっぽど良い男だよ!」そう叫んで風介の家を飛び出した。


風介の家を出て、走った。雨に濡れて身体が重い。雨が頬を濡らして、目蓋も、重い。早く家に帰りたい。重さに従って脚がだんだんゆっくりと動いて、俺はとぼとぼと歩き出した。そうしたら、見覚えのある車が俺を追うように走ってきて、少し先に停まった。「なにやってるの晴矢」開いた窓から顔を出したのは茂人だった。友人の姿を見て感極まって、泣き出した。「風邪ひいちゃうよ…家まで送ってあげる」黙って頷いた。


「タオル、ここだったよね、晴矢は座ってていいから」






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うまくまとまらなくて迷走しそうだったからごみ行きで…
茂人さんが黒幕なんですけどね ヘヘ