夢を見た。私はいつものように挑発の声をかけるが、赤色髪の彼は反応することなくそのまま立ち去ろうとした。制止の声で振り向いた彼の目はとても冷たいもので、私は呆気に取られてその場に立ち尽くす。それから間もなくして紅色髪の彼も現れた。私は動揺を隠し彼にも声をかけるのだが、彼はこちらを見ることもさえしなかった。そして暖色の髪が2人、立ちすくむ私を置いて歩いて行く。彼らと私の間には透明な壁が、分厚く何層もある気がした。2人して、なに急に。なんだ、何が、なんで、なんなんだ なんなんだ。
寂しくなんか、ない。






どうも気分が悪かった。あれは夢で、気にしてなどいない、いないのだけれど…喉に何かつっかえているような、ずっと胸の中が沸騰しているような、とにかくずっと煮え切らない思いでいっぱいだった。気分が悪い。前髪を指に絡めてがしりがしりと引っ掻いた。
ユニフォームに着替え、自室を後にした。スライドの扉が開き部屋から出れば、何処か遠くからごおおと音が響くだけのつまらない廊下。そのまま廊下を歩き続けると、前方からこの腹立たしさの根源となった赤髪が歩いてきたのだ。何故この広いこの施設で朝からバーンに会わなくてはならないんだ。鮮明に記憶しているあの夢を思い出し、ぎりりと歯を噛み締め髪を引っ掻いた。畜生。


「ああ最悪だ…何で朝から君なんかと、」


すれ違いざまに呟いた。憎まれ口を叩き合うのはもう私達には習慣となっていた。けれど、やっぱり反論してこなくてバーンは何も喋らなかった。いつもなら「なんだとっ?!」って突っ掛かってくるのに。…私が、何をした、何かしたか、なんで無視するんだ、くそ、なんなんだ、私が何を!夢とは関係ない、関係ないのだけれど酷く腹が立つというか、悲しかったというか。寂しいのか、寂しいだなんてそんなわけが、

「っバーン!」
「?…っ!」

私は思うがままバーンの名前を叫ぶと過ぎ去ろうとした肩を掴み壁に押し付けた。私の声と顔の横に勢い良くついた手の音が静かな廊下の端にまで響いた。バーンは私の顔を、目を見開いてまじまじと見ていた。と思ったら顔を逸らされる、そんなに私が、

「そ…そんなに、私が…」
「ガ、ゼル…?」
「そんなに私が嫌いなのか…何故無視するんだ…っ」
「…は、え…?」

は、お前…何泣いてんだよ…。って言われた。私は泣いてしまっているらしい。けれで今はそんなことより、何故私の事を無視しているのかが知りたかった。目の前のバーンは困惑しきっていた。






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バーン(とグラン)に無視される夢を見て怖くて苛々したガゼルで、そんなガゼルを見たバーンが「こいつ苛々してるみたいだから構わない方がいいな」って珍しく学習して無視をするんだけど、それにショックを受けるガゼルで、バーンが「いやそうじゃなくて…別にお前のこと嫌いになったとか、そんなんじゃなくて…」ってなる話にしたかったけど…時間だって上手くオチつける自信がないのでごみ行き!