あ、あー、と晴矢は意味もない言葉を発した。その表情はどこか腑に落ちないような、納得出来ないような、そんな顔をしている。私が目覚めた時、彼の声帯は少し変化を迎えていたようだった。

「何か、変わった?」
「ちょっと低くなったかもしれない」
「そっかぁ。あ、あー…」

日本の男性と言うのは大抵平均11〜14歳で変声期というものが来るらしい。私達は13歳になり、晴矢は私よりも一足早く変声期を迎えたのだった(人よりも遅いかもしれない)。競う事ではないのだが、何だか負けたような、置いて行かれたような、複雑な心境だった。晴矢は少し嬉しそうに、何度も掠れた声を喉から絞り出すのだった。






「んう、あっ、あ!」

中を突く度に、私の腰の動きと連動して晴矢からはひたすら声が漏れた。ベッドのスプリングが軋む音と2人分の吐息に晴矢の声が混じる、が、いつもより少し低い掠れ気味の声は、聞き慣れた声とは違い違和感を覚えた。風介、そう放たれる言葉は確かに晴矢の物なのだが、その変化に何だか納得出来ずに、行為に集中しきれずにいた。伸ばされた腕が首元に絡み、声と吐息が更に近付いた。

いつもそうだった。
初め自分から私に手を差し延べたくせに、勝手に一人で進んで行く。学校でも一人で先にクラスに溶け込んでしまうし、こうやって一人で変声期を迎え、勝手に先へ進んでいく、大人へなっていく。そう考えだしたら何だか苛々してきて、少し荒っぽく腰を動かす。晴矢はびくり、と身体反り返らせていっそう大きな声で喘いだ。

「あ!んんっ、ひっ…!」
「晴矢」
「風…っ、なに苛々してっ、んだよ、あっ」

別に苛々してなどいない。そう言って晴矢の声を掻き消す様にただ腰を動かす。
晴矢は、これからこうやって私を置いていくのだろうか。一人で成長して先に進んで行ってしまうのだろうか。私は晴矢と、いつも一緒だったのに。
やがて瞳からは涙が零れていた。悲しいとまでは行かないが、少しセンチメンタルになってしまったようだ。上から降ってくる涙に気付いた晴矢は驚き、私の顔を見上げた。ぼやけた視界からも分かる程にその瞳は欲と熱に塗れている癖に私の心配など、随分余裕があるようだ。一度強く突き上げてやればまた大きく身体を震わせたが待てよ、と静止される。

「っなに泣いてんだよ…」
「なんでもない」
「何でもなくないだろ」
「…ちょっと、考えていただけだ」

このまま、お前が私を置いて先に進んで行くんじゃないかと思った。
私がぽつり ぽつりと話すと、ぽたり ぽたりと落ちる涙を受け止めながら晴矢は黙って私の話を聞いていた。一通り話終わって一息付けば、晴矢は私の涙を雑に拭った。そうして、晴矢の中が急に強く絞まる感覚がして う!、と息をのむ。私が眉を歪める様子を見て声を上げて笑っているから、晴矢がわざと絞めたのだろう。

「別に置いていかねぇよ。」
「だが、」
「お前は俺の、こ、恋人だろ…」

少し照れたようにそう言って口元を上げた。恥ずかしいから話を終わらせたいのか、分かったら早く動け、何てぶっきらぼうに言い捨てて再び首に腕を回した。自分で誘って来るだなんて、何を言っているのか分かってるんだろうか。けれど、私はいつもの様にそれに深く追求を入れ虐める余裕もないほどに感情が高ぶっていた。恋人だろ、だなんて言われた事ない、君は、可愛すぎる。
心臓が煩い。興奮し晴矢の中に収まる自身を膨張されれば、晴矢はより赤面させて焦ったように、何大きくしてんだよ、と言った。もう喋らないでくれ、その声で。抑えられなくなる。
再び行為を再開する。焦らされた分先程より甘いその少し低い声も、悪くないかもしれない。その声に慣れるまで今夜は付き合って貰うけれど、君が誘ったんだから文句は受け付けない。







行って待ってる!





(おはよ。腰痛いんだけど。)
(君が誘ったん、じゃ、ない…か?)
(あ!何か声低くなってねぇ?)
(んん、あ、あー…何か、そうかもしれない)





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声変わり萌え…
ちょっと年齢的に無理があるかもしれませんが。

しかしこのサイトの晴矢さんは萌えない。どういうことなの…