怖い。怖いんだ。私は暖かい晴矢の首元に顔を埋め、心の内を漏らした。ユニフォームを着ると心の奥底から深く冷えていって、やがて身体中が凍ったように冷える。もう熱い血なんて流れていないようで、心臓の鼓動だって私には感じる事が出来ない。その中で勝ちたいと思えば思う程深い所から何か黒いものが渦巻いて私を支配し、私の身体が動くんだ。信じられないような黒く冷たい力が沸き上がって来る。いつか取りつかれてしまって、私は私でなくなってしまうんだろうと、初めてユニフォームを着て"ガゼル"になった日の夜に布団の中で身体を震わせながらそう思った。ユニフォームを着なくてもこの心は凍てついて溶ける事はなくなって、きっと君の熱い身体にはもう近寄る事は出来なくなる。現に、私の心は凍り始めていたのだ。

(怖い)(こわい、)

どうすれば良い、どうすれば君とずっと一緒に居られる、私は、独りでは、君無しでは生きて行けないよ、晴矢、


私達は夢中でキスをした。互いに舌を絡ませ、息をも止めていた。双方から流れた涙が触れ合って一つになる。好き、離れたくない。強く抱きしめあえば、互いの爪が互いの背中に跡を残す。跡はすぐに消えてしまうんだろうと考えると、より力がこもった。独りじゃないと、私達は一緒だと、確認するかのようにいつまでも強く強く抱きしめあった。どうやったら一つになれる。どうやったら君とずっと一緒にいられる。どうやったら、

「晴矢、晴 矢、はるっ、」
「風介っ…ふうすけ…」

もう一緒にいられない事なんて、本当は分かっていた。
それでも、どうやっても心から敵対し合い憎しみ合うだなんて出来そうにないから、こんなにも悲しい。






いつか、きっと





(わたしの心が凍ってガゼルから戻れなくなったら、)
(いつの日か、君の炎で溶かしてほしい)





------------

あんなに人間を強化できるエイリア石なんだから、副作用があってもおかしくないよね。
エイリア石を使い始めた頃のガゼルさん。