ポアントガール | ナノ



はじめて、こんなにも人を「きれいだな」って思った。
人形みたいだなって思う俳優や、作り物みたいだって思うアイドルを見たことなら沢山あったけど、私みたいな普通の人間が生きてる内じゃきっとないものだと思っていた。

見惚れ呆けてハッと気が付いた頃にはもうその人の影は見当たらなかったから、もしかしたら見間違えだったのかもしれない。

だってあんなに、あんなに綺麗な男の子なんて、実在するのなら羨ましすぎる。



「え?それ、白石君とちゃうん?」

「シライシ?」

「めっちゃ綺麗な男の子やろ?白石君しかおらんよー」

「実在するんやぁ…!」

「は?」


朝に見掛けた男の子のことを考えていたらいつも以上にボーっとしてしまって、あっという間にお昼休み。友人に今日のいいことを喋っていたら、予想してなかったお返事になんだか少しびっくりした。シライシくん。白い石で白石君?そう訊ねたらそれ以外にどんなしらいしくんがあるのかと質問を質問で返された。
パックのミルクティーをズッと飲みきって、パチンと手を合わせる。今日も美味しく頂きました。お母さんと冷凍食品様様です。
もう3年生になって二ヶ月なるけれど、2年生とあんまり変わっていなかったりする。昨日も今日も明日も友達と食べるお昼ごはんの時間を楽しみに、歩いて10分の道のりを20分かけて登校する。好きな授業も眠たい授業も怖い先生も大好きな先生も乗り越え踏み越え青春ライフ。正直未だにお笑いのノウハウは身についていない。ボケなくても突っ込んでくれる友達がいるし、突っ込まなくてもボケ倒す友達もいるし。

そんな感じで過ごしてきた中学校生活だったけど、四天宝寺中学校は大阪でもまたとない大きな学校だから、同学年でもまだ顔と名前が一致してない人が結構いる。
男の子に関してはクラスが一緒でも名前を覚えきれてない。そんなに関ることないしなぁなんてのんびりしてても、「まだ覚えてないんかい!」ってノリノリで突っ込んでくれるからあんまり困らない。
そんな男の子の1人に、その白石君という人はいたらしい。クラスも一緒になったことなかったんだろうな。本当に知らなかった。


「もしかしなくとも名前ちゃん、白石君のこと知らんかった?」

「うん、今日初めて見たんだと思う」

「名前ちゃんありえーん!」

「え?!やって、知らん男の子なんていっぱいおるやろ?」

「そりゃ多少おるけどぉ、白石君知らんのはおかしいやろー」


白石君ってそんなに有名人?
まぁあんなに綺麗な人だったし、すっごく人気があるのかも。

そんなにおかしいかなぁ、ストローを咥えて勢いよく啜るけど、そういえばさっき飲みほしたんだった。ズヒョッと大袈裟な音を立ててミルクティー。なんだかとっても空しい気分になった。もう一個買わなくちゃ。自動販売機ってこのクラスからちょっと遠いんだけどなあ。
向かいでまだパンを齧っている友人が、空しい音を立てた私の紙パックにひとしきり笑ってから「あぁ」なんて大人っぽく呟いた。友人は美人さんだから、何をしてもそれなりに様になる。お得意の変顔以外は。そんな彼女はサッパリとした性格も手伝ってかなりモテモテな女の子だった。ただちょっとイケメンが好きなところがあるから今のところ彼氏はいない。なのに好きな人もいないと言うから不思議だ。私も、友人が大好きだ。あと友人の唐突で様にならない変顔も大好きだ。


「あぁせや、丁度、そのミルクティーみたいな髪の毛しとったやろ」

「え?」

「白石君」

「あぁ!うん!美味しそうやなぁって!」

「そこでテンションあげるのやめようや」

「そっか、白石君って言うんやなぁ」



ガラス細工でミルクティーな彼は白石君というみたいだ。なんだかもう一度会いたいなぁ!



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