透明で彩る | ナノ

 
 
正直とてもとても、驚いた。
裕次郎にそんなこと言われて、何をどうやってどんな風に返せばいいのか全く分からなくなってしまった。
その好きと言うのは恋愛感情らしく、つまりラブとライクで言うならラブの方な訳で。ためしに聞いているのか本当に思っているのかは分からないが、どちらにせよ結構大きな話題だと思う。

あ、

ぐちゃぐちゃと混乱していく頭の片隅で気が付いた。例えば裕次郎が私のことを本当に好きだったとしても、。

裕次郎は2歳の時からの幼馴染。凛もまた6歳からの、幼馴染。
幼馴染に好きと言う感情を抱かれてはいけないのか?
そんなことない。そんなはずない。
裕次郎はわたしがすきだという。それが不自然であるなんてことこれっぽっちだってないのだ。
そうやって改めて思うと、不思議と違和感ばかりが私の思考を覆った。

好きなんて言葉だけならばやはりその中身は実に、浅い、あさい。
けれど感情が籠ればその一言に含まれる意味は正に多種多様になってくる。色々あるのだ。
友人家族恋人、その中に幼馴染を入れてはいけないわけがない。
その好きとこの好きとあの好きと、そんな簡単に見分けることなんて出来るだろうか。
随分と言い訳のようではあるがそれが私の出した答えであり、返事であった。


「好きって、言うんじゃない?」


なんだか色々とグチャグチャしていたものは吹っ切れて何処かへ消えて、同時になんだか面倒臭くなって私は後ろのコンクリートへゆっくりと倒れ込んだ。この好き、に、含まれる意味は、裕次郎に委ねるとしよう。
目を閉じる最後に見た景色は、裕次郎のふわふわとした茶髪を隅に描く、綺麗な夏の空だった。


あんな質問して来た裕次郎は恋をしているのだろうか。
しているとしたら、誰にだろう。
私に質問して来たのだから、もしかすると私かもしれないし、
他のクラスの子かもしれないし、はたまた後輩、若しくはもっと遠くの、他の学校の子かもしれない。

ああ彼は、恋を、しているのか。
幼馴染という身近な存在は殆ど家族と近いためか、今まで一度として彼が恋をしているという可能性を疑ったことがなかった。なんとなくだが、恋愛感情を持たない人間なのかもしれないと錯覚してしまっていた。ああそうか、恋か。


そんなことをゆるゆると考えると私達は随分と青くて、そしてとてもとても、キラキラとしていて、とてもとても、素敵だと思った。




例えるなら海とかはどうかな


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