透明で彩る | ナノ

 
 
そろそろ屋上に居ると日差しが眩しい。沖縄はもう殆ど夏の景色で彩られていた。しかし今はまだ初夏ですらない。今日は特に蒸し暑い天候だったのだが、それはもう夏さながらのそれになんだか少し海が恋しくなってきた。

彼女は暑さと言うものを感じないのだろうか。爽やかに髪なんか靡かせて。俺は何か会話をと口を開いた。出てきたそれが自分でも少し予想外だったけど。

「なあ、もしも、俺がやーのこと好きってあびたらちゃーすが?」
「…は?裕次郎が?私に?」
「もっかい言うけど、もしも、な」

屋上でさぼるなんて初めてじゃないけど、なんだか今日はいつもと違ってドキドキしていた。それは先生に怒られると分かっていて何か悪戯をしたりしていた小学生の頃のドキドキとは違う種類だと気付いている。

こんなこと訊いて、引かれるに決まっているのに。あー、俺のバカ。樹は特に意識していないようで、それが少し切ないけど、こいつはそう言う奴だと言うことくらい百も承知。その上で聞いたのだから、悲しむなんて自分勝手だ。んー、と考える素振を見せる樹はいつも通り綺麗で、思わず少し見惚れてしまった。

「実際に言われてみなきゃ分からんけど、それって恋愛感情でって意味で?」
「…お、おう…るくぅ深く考えんなよ!」
「あー、うん。たぶん、多分やけど、好きって言うんじゃない?」
「、え」
「ははっ私にはそーいうのよく解んないさー。るくぅ宛てにさんけーね」

綺麗に笑んだ樹は俺が唖然としている間にそれじゃ寝るから、と言って瞳を閉じた。

どう意味で受け取れば良いのか。
自分から振ったのに、今のがいつもの彼女のからかい癖なのか、それとも本気なのか全くわからなくなってしまった。どちらにせよどうしたらいいかわからないけれど。
ゴチャゴチャ絡まる思考回路はショート寸前。いつもと変わらない表情で瞼を下ろしている彼女に振り回されているのは昔からだ。



これも全部夏のせいにしてしまおうか


*****
あびた…言った
ちゃーすが?…どうする?
るくぅ…あんまり
さんけー…しないで

春なのか夏なのか間なのかその他なのか分からないですね。一応春後半ですそろそろ初夏ですってところな設定です。もう暑いですね。

prev//next