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戸惑いながら手をにぎるような、そんな関係。俺と君はそんなちぐはぐの関係でじゅーぶんすぎるくらいで、それは俺も重々承知で。べつにこれと言った文句とか、なかったんだけどマンネリ化って言葉を聴いた瞬間、なにかひっかかった。マンネリ化ってなに?クラスの奴にそう訊くと同じ状況がながーいこと続くことだと思う、たぶんね。って言われた。へー ふーん、そうなんだ。まるで俺らみたいだと、あの子の顔を思い出す。
 
 
あ。
 
 
クラスの奴は急にこえをあげると、間違えた。っていってマンネリ化ってゆうのは、と言い直しをした。
マンネリ化ってゆうのは、同じ状況が続いてつまらなく思うこと。つまり、飽きが回るってことだよ。さっき買ったばかりのイチゴオレだって気に入ったとか言っていたけど、毎回買うとさすがに違うのが飲みたくなるだろ?そうゆうことなんだよマンネリ化は。知ったようにつらつら喋るそいつが言っていることが本当にあってるのか、俺には確かめる気力が無かったから「そうか」と納得した。例えに出されたイチゴオレのパックに水滴がついていて、指で何気なく拭いながら暑くてほやぼやしてる頭はあの子のことを思い出している。笑う顔や怒った顔や、もう色んな顔をみてきたからなのか特にしてあげたいことなんて無い。それはマンネリ化だと思う。
 
 
 
 
 
「それで別れるの?」
「そ、」
「丸井って、つくづく馬鹿だと思うよ」
「いや馬鹿じゃねえ天才だし」
「馬鹿と天才は紙一重なの。まあそれが丸井とは限らないけど、とりあえず別れるならそれなりの覚悟は決まってるんでしょ」
 
 
結局飲みきらなかったイチゴオレを土産に、マンネリ化恋人である名前の元へいくと小さく笑われた。名前は思ってたより嫌いなモノがなくて、甘いイチゴオレを一気に飲み干した。おまえそれパックの半分くらい残ってた筈なんだけど可笑しいな。空っぽのパックを渡されて要らねえよと返すと、丸井は教室帰るときゴミ箱通るじゃんという決定的な理由をつきつけられ仕方なく受け取った。
これがマンネリ化になるほど続いてた恋人の最後の会話なのかよぃ。
 
 
「えーと、で、なんだっけ?」
「……だから」
「ああ 別れるんだったね。友達に戻るとかそーいうの、わたし好きじゃないから」
「てか、彼女じゃなかったら俺のそばには元々居なかったろぃ」
 
 
それもそうだ。咲きかけの桜みたいに完璧じゃない笑顔がどこか消え入りそうだった。だから抱きしめたくなるみたいで空中を無造作に上げ下げしている手に何とか自制心を保ちながら、これが“最後”って言葉の威力なのかとしみじみ思う。更に“最後”だと考えると、付き合ったばっかのときに「二人で肉まんを半分個!」「夏にはチャリを二人乗りで海行く!」なんて青春ドラマさんざんバカにしながらも真似して約束したことを思い出して どーしようと悩んだ。それは向こうも同じなのか、言いにくそうに口を開く。
 
 
「同じ高校行くの、どうするの」
「……あ」
「わたし、志望校変えようかな。その方が丸井的にも助かるんじゃない?」
 
 
なにが、なんで、どうして。なんて愚問で、居辛さを考慮してくれてるんだろう。でもなんだかそれって悲しい気がするし、これから先ずっと名前の姿見ないなんて俺ちょっと考えらんねえけど。ううーんあああやっぱりごめんなさい俺はマンネリ化だろうとイチゴオレに飽きが回ろうと名前を好きじゃなくなる日なんて来そうにないわ、だから前言撤回!今なら土下座でもなんでもするから別れたくねえ。必死にそう考えて下げていた頭をバッと名前に向けると、驚いたように名前は俺の名字を呼んだ。そうだ、それだよ。
 
 
「名前が俺を名前で呼んでくれんなら、マンネリ化とかぶっ飛ぶんだけど!」
 
 
自分勝手なんて百も承知。ここで呼ばれなくてカッコ悪い結果に終わってもそれは自分のせいなのも承知。それに、驚いていた名前が見たことないほど綺麗に笑うもんだから、次になんて言われるか分かって顔を真っ赤にした俺は本当に仕方ない奴だと思った。
 
 
「ずるいなあ、ブン太は」
 
 
 
 
 
 
(それでもお互い恋をする)
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