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途中まで真面目に書いてたからわかりづらいけどゴミカス/





「俺、おまえさんのこと、好きじゃ」


幸村と付き合っているのはテニス部レギュラーなら誰でも知っていた。だからと言って何かと言うわけではなく、わたしはテニス部のマネージャーを務めていたけど、それとこれとは全く別の話だから。だから仁王が、私達の関係を知っているのは明白だった。だからどうってわけじゃないし、だから告白してはいけないなんて事もないけれど。柳生なら見抜けたのかもしれないけど、伝えときたかっただけじゃから。なんて格好付けて薄く笑ってた仁王が本気だったのか、ただからかっているだけだったのかも、私には判然とせず。返事とかそういうのは求められなかった。そのまま黙ってふらりふらりとしたいつもの足取りで仁王は帰っていった。そしてそれから、見掛けていない。

なんとなく億劫で、仁王のことだからただほっつき歩いているだけだろうなんて考えが強かったのをいいことに連絡も取らず。初日に赤也がバカひかないはずなのに、風邪っすかね?なんておどけた。二日目に仁王の担任にアイツはサボりかと尋ねられた。三日目に丸井がしかめっ面で、じゃがりこ奢るとか言ってたくせにと文句を垂れた。五日目に真田が不安と心配と苛つきが混ざった表情で携帯にも出ないと呟いた。そして八日目。一週間と一日目、やっと仁王が現れた。

バシ、乾いた強い音がした。驚いてそっちを見ると幸村がゆっくりと手をおろしているところだった。幸村は怒っている。気持ちの読めない無表情。向かい合う形で立っている仁王の頬を殴ったことくらい直ぐに察しが付いた。仁王の顔は暫く見てなかったけれど、特にこれと言った変化はなくて。それもそうか、当たり前だ。暫くとはいえ、たった一週間の内に人の顔なんてそう簡単には変わらない。そんな仁王の顔にもまた、表情はなかった。
一週間、部活はおろか学校にも顔を出さなかった。先生も大事に見てなかったことからもわかるように、確かにただのサボりかもしれないが、こんなにも続けて顔を見ないなんて殆ど初めてだったように思う。

「連絡も寄越さず今まで何してたわけ」
「べつに」

幸村の穏やかじゃない心中くらい仁王は読めるはずなのに、わざとなのかそうでないのか 彼は幸村の怒りを逆撫でするような曖昧で生気のないぶっきらぼうな返事をする。私には仁王は意図的に幸村が一番苛つく返事をしているような気がした。後ろで部員の誰かが生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。それがみんなの緊張を全て表しているみたいで、ますます掌に汗が滲んでゆく。

「今が俺たちにとって一番大切なときなんだってことがわからないほどのバカだとは思ってなかったんだけど」
「…はは、買い被りすぎじゃろ」
「…ッ何が可笑しいんだよ!」

自嘲的に笑う仁王の頬にまた、酷く感情的に怒鳴りつける幸村の掌がぶつけられた。なんでっすか 切原の今にも泣き出しそうな情けない声が小さく聞こえた。
わたしだってわからない。むきになっているようにも見える幸村の表情は私に向けられたことのないものなのだから。かと言って、どうしたのよ らしくないよ、なんて間に割って入れるような空気でもないのはよくわかった。つまり私なんかじゃ手の施しようがない。何もしてあげられない。それは他の皆も同じような気持ちのようだった。

「え。なんでそんなにキレとるん?ダッサ」
「お前なあ…!」

幸村が人を心底憎いと言った目で見るのは多分それが初めてだった。すこし怖いとすら感じた。流石に三度目の拳とまでは行かなかったが、握りしめられた拳が抑えられない怒りに震えている。
いや、理由はわかるのだ。全国大会前の今は、結果を左右するほどの大切でデリケートな時だし、みんな少なからずピリピリしていた。今部活に精を出さないでいつ出すんだというこんな時に一週間も行方不明になる部員など、怒られないで済むわけがない。なにより、他の部員の士気にもかかわる。

けれど。

仁王が言った通り、幸村のその表情や言動は、仁王に怒っている、仁王を叱りつけているというよりも、仁王に対してキレている、と言ったほうが正しいような気がするのだ。

「なんつうか、ただでこんだけ殴られるンも納得いかんわけ」
「は?ただで?…お前、自分がどれだけのことしたかわかってんの?」
「あー…、お前のカノジョに告ったこととかか?ははあ、それでそんなにお怒りなわけか。熱いのう」

すうはあと呼吸を整え、感情を無理に落ち付けた幸村の、それでも怒りの透けた言葉に仁王は、バツが悪そうに、しかしその割にはあっさりとそんな言葉を返す。
今度こそ幸村の三度目の拳が飛んだ。間一髪で避けて仁王が殴り返す。冷静でない幸村の顔にそれは思い切り当たる。いやな音がした。とうとう後ろで部員の誰かが泣きだす声が聞こえる。当たり前だ、尊敬する部長と先輩が全国大会前に殴り合いの喧嘩だなんて。もうテニス部も終わりだ、そう感じても仕方ない。あれ。テニス部も終わり?

「や、やめ…やめてよ!バカなことしないで!」

気付いた時には声を張り上げていた。だってそうだ。こんなところ先生にでも見つかって謹慎処分でも食らったらどうする。それこそ終わりだ。こんな、バカげた理由で。

「バカなこと…?これがバカなことに見えるの」
「は、間違ってないじゃろ。みんなの前でガキな言い争いじゃったな。悪かった」
「ガキって仁王お前本当にいい加減に…」
「俺もうこんなんやめっからええわ 勝手にしたら」
「ふざけるなよ…!ここまで来て全国から逃げるのかよ!」
「全国?…ほんま何も見えとらんよ、お前さんは。俺はテニスをやめるなんて言っとらん。このゲームから降りるって言ったんだ」
「待てよ仁王、」
「待たんわ、追う気もなかろ。明日から部にも出るけ、邪魔したのう。じゃあな」

悪かった。じゃあな。その二つの言葉を喋るときだけは、明らかにこちらを見ていた。またひょうひょうと風に吹かれるような足取りで去っていく仁王を、誰もが追いかけることも出来ずに見送った。まるで嵐のような瞬間だった。

 

「告白されてたこと、知ってたの?」

帰り道はまるでいつもと変わらない風景で、幸村も先程の怒りで震えるあの姿は別人だったのではと思わせるほど、いつも通りの穏やかな彼だった。ぽつりと思ったことを口にしてから、しまったと思った。わざわざぶり返す必要は、なかったかもしれない。
しかし私の杞憂をよそに幸村は、まぁねなんて笑う。

「知ってた、っていうか、わかってた」
「へぇ…わたし、からかわれたのかもって思ってたんだよね」
「そう思われても仕方ない奴だからね」

そう口にする幸村の口調に棘はなく、むしろ困った奴だと優しく呆れているような印象すら受ける。すこし不思議に感じて、黙り込む。

「ちょっと妬いてたのかもしれない」
「幸村が?」
「そう」
「……それで、あんなに?」
「もちろん、無断でサボってたことに腹が立ってたんだけどね。まぁ、それもあるかな」
「そうなら明日、部員の皆に謝ろうね 一年の子泣いてたから」
「悪いことしたなあ」
「あーあ、本当にひやひやしたんだから」
「俺だって、仁王が部を辞めるとか言い出したらやばいなって思いながら殴ってた」
「幸村っていつも冷静なのに考えなしだよ…」
「はは、でも、明日からは大丈夫だから。安心してね」
「どうだか」
「男同士のケンカってこんなもんなんだよ」



そんなの理解出来ない。そんなことで話に引っ張り出された私もシリアスになってた赤也も泣いた一年生も哀れでならない。幸村のまだ少し痛々しい頬にグーを重ねるようにぶん殴って走った。




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いやごめんねこれ全部読んだ人いないだろうと思いますがここで謝っておきますねごめんなさいね幸村と仁王に殴り合いのケンカしてほしくて随分前に書いて途中で路頭に迷った奴に書き足したらなおさらいみわからんくなったですごめんなさいね130628
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