ぐち子さまからプレゼント



『あのね、私綱海さんのことが好きなの。』



冬花が紡いだ言葉に、久遠は一言「そうか。」と返すことしかできなかった。娘の前だ。あくまでも冷静を保たなければならないという、僅かな父親としてのプライドが彼をそうさせるほかなかったのだ。しかし彼が思うよりも精神的ダメージは大きかったらしい。自分自身自慢のポーカーフェイスを崩すほどに、そしてその場から遠ざかる足音に気づかないほどには、久遠は動揺していた。
そして同時に目の前に突きつけられた『終わり』を、久遠は受け入れざるを得ないということもわかっていた。いずれは訪れたであろう均衡関係の崩壊が今日この日をたまたま選んだだけだ。はじめから永遠などありはしない。大人になればなるほどそれは、否応なしに現実として突きつけられる。
(私は父親失格だな。)
なぜならまだこんなにも、
こんなにも、



「ねえ、だからお父さん」
「……なんだ」
「綱海さんのこと、よろしくね」
「……は、」



今、なんと。そう問いかけることも久遠には躊躇われた。全ては冬花の満面の笑顔が物語っている。してやられた。



「かまをかけたつもりか、冬花。全く、誰に似たのだか」
「そんなの、お父さんに決まってるじゃない」



人当たりのよい可愛らしい微笑みを振り撒いて、冬花はいけしゃあしゃあと述べる。事実その通りである久遠はやはり返答に困り、結局は口をつぐむほかなかった。賢明で聡い冬花にこれ以上の弁明は必要ないと久遠はすでに理解していたのだ。やはり父親失格だと痛感せざるを得ない。宿舎の廊下を満たす空気に密かに孕まれた熱は、誰が潜ませたものだったのか。今となっては知る術もありはしなかった。



「私ね、綱海さんを早く条介さんって呼びたいの」
「冬花、」
「ううん、お兄さんかな。それとも…お母さん?」
「それはよせ」
「ふふ、冗談だよ」



冬花は、もう一度小さく微笑んで、久遠の後ろに回り込んで背中を強く押した。広い背中がよろめいて、しかし彼は振り返らなかった。



「行って、お父さん」
「冬花、」
「それと、頑張ってね」
「……ああ」



ありがとう。舌の上で転がした言葉は甘やかに色づいて、そのまま綱海の部屋へと歩き出した久遠に、静かに溶けていった。




∴しあわせかぞく計画




「文章廃棄」のぐち子さまがモソ野郎の絵の続きを書いてくださりました!面影も何もありません。
この久遠監督、綱海大好きやん^//p//^この家の養子になりたい…!
ぐち子さま、素晴らしいプレゼントありがとうございますちゅっちゅ!





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