ぼちぼち



「…次」
「ん」
ぬ、と手を挙げたのは茶に近い金髪にピアスと、あからさまに着ているスーツに不釣り合いな出で立ちの男。しかも俺に向かって斜め座り。片肘までついている。
姿勢を正せ、と睨むが「お〜恐ぁ」と肩を竦めるだけで直す気配は全く無い。周りの連中ならすぐに直すというのに。

不真面目にも程がある態度のこの男は、俺にとって特に胃の痛いゾーンに入った事を示している。
「返事を略すな」
「ええやん別に。今のメンツになって結構経つで?」
もうお互い顔覚えとるやろ、顔パスや顔パス。
そうケラケラ笑いながら言うソイツと、あろう事か納得顔の周囲に俺の胃袋が静かに痛み始めた。もうやだコイツ。

「大阪。あんまり坊をいじめたらあきまへんえ」

「はぁ? 何やねんな京都」
不意に隣から入った横槍に、大阪はムッとした様子でそっちを振り返る。その先には男の割に無駄なくらい艶やかな髪を一つに纏めて、(客観的に見れば)綺麗な顔には食えない笑顔を浮かべている姿。
一見間に入った様に見えるソイツは、昔っから一番苦手な奴。
「茶会の準備があるから、ウチは早う帰りたいんよ」
この清々しいまでの唯我独尊っぷりは一体何処から来るんだろうな。全盛期の俺ですらここまでだった記憶は無い。


「という事で。大阪と京都、出席です」
にっこり。
そう微笑んだ京都の一言で丸くまとまってしまった。
「広島出席じゃ〜」
「高知も出席」
「福岡、出席」
トントンと名簿は埋まり、ラスト一県。

………。

声が返ってこない。
よくよく見ると空席が一つ、一番左端に空いていた。
「………沖縄は?」


「………」


この場合、沈黙は返事である。
「…またか…」
のん気に笑う南国青年を思い浮かべて、ガックリとうなだれた。



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