ぼちぼち



「お前は大阪が好き。ボクは京都はんが好き。協力したら三方よし!」
「いやそれ三方やのうて二方ちゃうん…」
もうツッコミ所が多すぎて、いちいち指摘するのもバカバカしくなってきた。

早よ帰ってくれんかな…

思わず現実逃避したけた事に気付いたんだろうか。
グイっと肩にかけたタオルの両端を引っ張られて、前のめりになると同時に首が締まった。
「ぐえ! 何ずんね゛ん!」
慌てて手を放させて滋賀を睨む。
が、それ以上の目力で睨まれている事に気づいて、和歌山の背中に冷たいものが走った。
かつて、こんなに存在感のある滋賀を見たことがあるだろうか…琵琶湖以外で。


「和歌山さ、京都はんがライバルになって勝てる自身あるか?」
「うぐ…」
何のライバルかは置いておくとして、京都と張り合うなんて到底無理な話だ。
産業も、人口も、観光も、文化も、千年都を務めた古都に敵う訳が無い。
勝てるとしたら山の比率と果樹の収穫量くらいだろうか。
「ボクもその逆なんよ。絶対負けたないけど、本気出されたら苦戦どころの話違うねん。せやから」
ニイ、と滋賀が薄く笑う。


――先手必勝って事で、助け合い協定結ぼうや。


何の、とは聞かなかった。
黙って差し出された手をとり、小さく頷いた。ただそれだけ。


「とりあえず…はよ京都とくっつけや、滋賀。最近調子ええんやろ」
「そっちこそ。弱っとる今こそアピールするチャンスやん」
「…弱っとるは余計や!」




小さな小さな、ヒミツのキョウテイ。



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