ぼちぼち



久々の炭焼きを終えて小屋から出ると、思いがけない人物が立っていた。
「やっと出てきた! 遅いわ和歌山〜!」
遠くから両手を振るその人は、子供っぽい顔についた丸い目を吊り上げてこっちを見ている。
いつも近所の古都様(笑)とつるんでいて、まかり間違ってもこんな所にやってくるような人物ではない。
のに、何故か山の上にある炭焼き小屋を訪ねてきて。
しかも自分を待っていたような事を言っている。
「…何やっとんねん、滋賀…」
まったくもって、理解不能だ。


「で、何の用やねん」
戻った自宅で適当に茶を出して、どっこいしょと腰を下ろす。
茶を受け取った滋賀はふいに神妙な顔になって、じいっと和歌山を見た。
「なあ…和歌山って大阪の事好きやんな?」
「ぶっっっ!?」
思いがけない問いかけに思わず茶を吹いてしまった。
むせて止まらない咳を必死になだめながら、突拍子もない事を言う滋賀と動揺してしまった己に軽く舌打ちをする。
けれどそんな事など気にも留めない様子で和歌山を見つめる顔は、真剣そのものだった。

「なあ、好きやんな?」
真顔で訊いてくる滋賀の迫力は今までにないくらい緊迫したもので。
「な、何言うねん! そんな事…」
普段から想像もできない押しの強さに、どんどん言葉尻が弱くなっていく。
これが近江商人の気迫か?なんて思いつつ腰が引ける。
はっきり言って…怖い。特に目が。

「好きやないん?」
「いや、そういうわけじゃ…ってかおまんも好きやろ!?」
苦し紛れに答えると、滋賀は冷めた様子でハッ、と笑った。
その表情が京都と似ているのがまた…
若干イラッとしたが、何処となく地雷を踏みつけるような気がして和歌山は押し黙った。
空気を読みすぎて空気になりつつある男、和歌山のなせる業である。
「それとこれとは違うわ。分かっとるくせに」
呆れた声色で言う滋賀は、半ば睨む様にして視線を投げてくる。
どうやらさっきの鼻先笑いで逃がしてくれる気はなさそうだ。



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