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バカ、意識しすぎ


朱鳥がまとわりつく様になって、結構な時間が経った。最初は俺と一緒に居る事を不思議そうに見てた周りも、いつの間にか馴染んでいるみたいで。
いいライバルに出会えたな、とまで言われた。
確かに傍から見ればそうなのかもしれないが、最近は何かが違う気がするんだ。
お互いライバル意識なんてしていないし、朱鳥に到っては…


「蒼海…どした?」


ハッと我に返ると、図書館の風景が広がっていた。そしていつの間にか、すぐ近くに朱鳥のドアップが。
思わず後退してぶつかった本棚が、ガタンと音を立てた。
「な…何でもない」
軽く頭を振って、取り落とした本を拾う。
フと分類外の本が差し込まれている事に気付いて、何も考えずに引き抜いた。

「…!?」
しまった、と思った頃にはもう遅い。均衡を崩した本がドサドサと降ってくる。
とっさに庇う事も出来ずに、体は引き抜いた体勢のまま。ああ、ぶつかるな…なんて妙に冷静な頭で考えていた。
「危ないッ!」
グイッと体を後ろに引かれて、本の雨が瞬時に遠ざかった。けたたましく落下していく本の流れをポカンと見つめる。
物事が瞬間的に起こりすぎて、上手く頭が働かなかった。


「はー…ビビった…」
「…! わ…悪い」
耳の傍で聞こえる声に、飛鳥に助けられたのだと理解がようやく追いついた。
反射的に振り返ろうとして、その距離が殆ど無い事に気付く。

体がギチッと固まった気がした。

「何で避けないんだよ、蒼海…」
危ないだろ〜!なんて力無く言う飛鳥。無意識なのか言葉に合わせて、俺を捉える腕の力が強くなった。


すぐ後ろに朱鳥の体温があって。

朱鳥が喋ると声が鼓膜に直撃して。

朱鳥の吐息に耳元がくすぐったくなる。


言うなれば、後ろから抱きしめられている…という状態だろうか。
「そ…そんな反射神経を俺に期待するな」
そう言う口とは裏腹に、心臓は妙な速さで走り始めていて。
それに気付いた体は慌てて朱鳥から逃げ出した。急いで本をかき集めて、適当に棚にしまう。


分類外の本まで片付けてしまった事に気付いたのは、カウンターに戻った後だった。


バカ、意識しすぎ

(何やってるんだ俺…おかしいだろ…)




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