ピンポーン
チャイムを押すと、向こうから足音が聞こえる。近付いてくる足音にソワソワしてると、ガチャリとドアが開いた。
「早いな」
「へへ、部活終わったらソッコーで来た」
今晩は蒼海家で晩飯。
好きな奴の料理してる姿(しかも俺の飯作ってる!)が見れるのに、急がないバカが居るもんか。
広いキッチンで、2人揃ってエプロン姿。
軽く会話しながら作業を進める。
出来た料理を皿に盛って、机に並べて。
向かい合って、他愛ない会話をしながら食事をとる。
やばい…幸せすぎて怖い!
「…翔悟、味はどうだ?」
「ん、メチャクチャ美味…え?」
思わず蒼海を凝視する。
い、今…翔悟って。翔悟って言ったよな!?
「いいい、今っ…」
顔がじりじり熱くなってくる。真っ赤になってるのが、自分でも分かるくらいだ。
すると蒼海は珍しく頬杖をついて。
「どうしたんだ朱鳥」
とクスクス笑った。
…確信犯? まさか確信犯なのか!?
「さっ、さっき翔悟って!」
「そうだったか?」
うそぶく蒼海は悪戯っ子みたいな顔で、そんな顔するのか…なんて驚きつつも見とれてしまう。
「も…もう一回名前で呼んでくれ!」
って俺のお願いも、
「気が向いたらな」
って軽くあしらわれる。
その笑顔がまた、堪らないくらい優しい。
あぁもう…頼むから、マジ頼むから、俺をからかわないでくれ…!
ずるいから好きです
(勘違いしそうじゃないか!)