「じゃっじゃ〜ん! どーお?」
ひらり、とワンピース(通販で密かに買ってたヤツ)を翻しながら一回転。
後ろ手に覗き込むポーズを取ると、固まってた仁が動き出した。
「どーお、って…」
「ふふん、似合ってるだろ!」
何せ、朝から鏡の前で何時間もセットしたんだからな!
道でも普通に人がすれ違ってたし、男には見られてないはずだ。
「まぁ、違和感はねーけど…スカートでがに股はアウト」
「おっとイカン」
いつの間にか開いてた足を慌てて閉じる。
油断すると、すぐこうなるんだよな…女の格好って結構めんどくせー。
「ずっと思ってたんだけどさ…何で女装とかしてんの」
仁の言葉に、ギクリとする。
そうだ。その質問を待ってた。
親が知ったら卒倒するかもしれない今の格好。俺はその理由を伝えるために来たんだ。
―――でも。
「………」
「何、その沈黙」
「だって」
「うん」
「………」
言葉が繋がらない。
何となく理由は分かってる。怖いんだ。
「何」
だけどちゃんと覚悟はしてきたんだ。
してきたはずなんだ。
言え、俺。
このままじゃいられない…だから来たんじゃないか。
「…このカッコなら、手繋いでもお前何も言わないし…」
「な…!?」
仁の澄ました顔が一気に崩れた。
でも事実なんだから仕方ない。