『時間は残酷だ』

そう大人が呟く言葉を真に理解するには、学生である俺たちには少し早い。何故なら、顧みるには過去の時間が些か短いから。十年としばらくしか生きていない若者には、数十年単位で過去を見る大人の感慨深さなど僅かしか得られないと俺は思う。

―――ただ、物事には例外があるものだ。


「何してる」
思わずそう呟いたのは幼馴染みの家、ソイツの部屋。お互い片親でいつも一緒に居た、親友であり兄弟であり…まぁ、あと色々。
高校で学校が別れてからは遊ぶ機会も減ったけれど、まぁ家が隣だからよく会う。だからこの間親父が出張先から持って帰った土産を手に、家へ上がり込んだんだが。

「ナオ! 来てたのか!」

抱き枕を抱きしめたまま振り返った幼馴染みの顔は緩みきっている。頬ずりする様子は見てて正直キモい。これが外に出ればクールな二枚目、なんて専らの評判なんだから人の噂はアテにならないものだ。
「…そのシャツ、無くしたのにそっくりなんだが」
人型をした抱き枕が着てるのは薄いグレーのストライプが入ったワイシャツ。確かここに泊まりに来た時に無くして、代わりを貰って着て帰った気がする。
「そりゃお前のだからな」
サラッと言ってのけた幼馴染みに一発食らわせて、ついでに背中を踏みつけてやった。
「またか! 人の私物盗むのもいい加減にしろ変態!」
怒りに任せてかかとで背中を踏む力を強めると、痛い痛い!と暴れ始めた。

―――が。

「あっ…あ、もっと…」
そんな声に、しまったと慌てて足をどける。視界に入った顔は、恍惚とした表情で浅い呼吸を繰り返していた。



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