「言い得て妙だと思いませんか?」
「はあ?」
くつくつと笑う声の主に視線を送ると、彼はニヤリと唇を弧に釣り上げた。細く長い指が顎にかかり、華奢な腕だが強い力で引き寄せられる。
短く唇に触れるキスをして、月は満足そうに微笑んだ。

「実際も貴方が私に喰われているのですから」

「―――ッ!」
反射的にカッと頬が熱くなった。
もう永くこの関係は続き、役割もお決まりだ。だが改めてそういう言われ方をすると、何だか悔しく感じてしまう。


「さて、折角夜が訪れたのですから…営みましょうか。時間まで」


それでも耳元でそう囁かれれば、太陽の悔しさなんか軽く吹き飛んでしまった。
決して強くない力にも抵抗出来ず、いとも簡単に寝台へと押し倒される。
「…お前には負けるよ、ホント…」
腕力ならともかく、この場合は決して月には勝てない。何だかんだでこの状況を望んでいるのを自覚しているから。

自分からは決して詰められない距離。それを詰められるのは月だけ。待つしかない太陽は、この時をどれだけ待っていた事か。
「それはどうも。では…いただきます」
「言ってろ変態」
睦言ですら惜しい。
そう言わんばかりに、ひんやりとした月の体温が太陽の暖かい体を包んだ。


この次の逢瀬は、また十数年後……



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