昼を司る太陽と夜を司る月。
世界に巨大な変化をもたらす彼らは、天空の正反対に位置する宮に座し、決して傍に在る事は許されない。
なぜならそれは禁忌であり、天の理であり、世界を運営するための前提であるからだ。もし禁忌を冒せばピラミッドから抹消され、代わりに新たな存在が作られる事になる。

「抹消だけは勘弁。どれだけこの日を待ちわびている事か」
窓を乗り越えてきた月が、パタンと窓を閉じる。瞬く間に彼の闇が部屋を覆い、光の反射が消滅した。
いつもは明るい窓の外も、今やすっかり暗くなっている。
「久々だな…この暗さ」
訪れた闇に少し気分を高揚させながら、確かめる様に金細工を見て回る。しかしそれらは彼に光を返す事無く沈黙したままだ。


―――夜の闇は光を喰らう。太陽と月が共に居ると、闇が光を覆い隠してしまうのだ。
故に長い接触は禁忌とされているが、少しの間だけ傍に居る事が許されている時間がある。

昼間でも闇が降りる特別な時間―――

「今の様な時間を、人は日食と呼ぶそうです」
「知ってる」
日食の時は常と逆で、一定時間共に存在しなければならない。
それもまた永い時間の中で繰り返されている事柄で、理由を追求する気力も意欲も消え去っていた。疑問を持つには、永く繰り返し過ぎたのだ。



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