それはいつか、の物語。



俺は忍足謙也です。
今日、小ろ……中学生になりました!!それと同時に髪も脱色しました!金髪です。おかげで髪がキシキシしてます。でも十分これで大人数の一年の中でも目立つと思うのでぜんぜん気にしてません。
なぜ目立ちたいかというと、それは………

「きゃあああっ!!白石先輩頑張って〜!!!」

「んんーっ、絶頂!!」

あの人、あの人と少しでも近づきたいから。
あの人、とは男子テニス部、部長の白石蔵ノ介の事だ。今の女子の先輩の声援は全て白石先輩に送られたもの。

俺はこの女子同様、白石先輩に惚れています。

彼の事を知ったのは一年前。ほんとに些細な事だった。


**

「ふおー!!月刊プロテニス発売してるやんけ!えー…今回の特集は……っと………」

それは小学校が終わった放課後。近くのコンビニで毎月楽しみにしている雑誌を立ち読みしている時の事だった。

「なになに………中学二年生で部長にまでのしあがった、四天宝寺中の聖書…あ…ばいぶるって読むんかコレ。」

今回の特集は俺が入学予定の中学校のテニス部で、思わず目に留まった。

「基本に忠実なプレイで周りを圧倒、技術はもちろん、パワーも兼ね備えている……」

雑誌には写真がいくつも載っていて、凄く綺麗なテニスをする人だな、って思った。
インタビュー部分には個人的な事が色々書かれていて、なんと苦手な教科が無いとか。
こないに完璧な人間が居るんかって思った。
テニスも出来て、勉強も出来て、おまけにイケメンときた。

俺はとにかく白石蔵ノ介に見入ってしまった。

いつもは買わず、立ち読みで済ませる雑誌を俺は初めて買った。
そして何度も何度も読み返しては"白石蔵ノ介"と会う日を夢見ていた。


**

仮入部期間では二年生が担当で俺達一年生をみてくれていたので、白石さんとは直接会えなかった。でもコート内の練習している姿を見れたから満足やった。それにフェンスの周りの女子よりも近くで白石さんの事を見れてちょお優越感に浸っていた。
二年の先輩にはよそ見すんな!て、怒られたけど。

「はぁー…マジ忍…足?なんて読むん?コレ」

「忍足……おしたりですけど?」

「ふーん…忍足か。変な名前やな」

いきなり二年生の先輩が話しかけてきた。しかも周りの先輩と違うてピアスぎんっぎんに着けとるし、頭もワックスでカッチカチや!!目付きごっつ悪いし…しかも飲んどるんスポーツドリンクやなくて……なになに?"パックぜんざい<白玉入り!>"やて!!?うっわ!色々と怖いわ!!この先輩!早よう話済ませてあっち行ってもらお!!

「な、んですか?」

「好きやろ。」

「はあ!!?」

「白石部長ん事」

「ぬあっなゅうやあうえっっっ!!?」

な、な、な、何でわかんねん!!明らかな行動をしてしまった俺を見て先輩は意地悪く笑った。

「やーっぱりな、バレバレやもん。さっきから顔真っ赤にして白石部長ん事見て……
呼んできたるわ、愛しの白石部長」

「えええっ!!?」

まさか本入部初日で憧れの白石さんに会えるとは……!!
この先輩、怖そうに見えるけど意外とえぇ人なんやな……メモメモ。

ちょお待っとってな、と先輩はレギュラーが練習しているコートへと駆けて行った。
も、もう少しで、もう、少し、もうすぐで……白石蔵ノ介に……!!

「コラッッ!!」

「!!??」

俺はその罵声に肩をびくりとさせ、恐る恐る声の主の方へと身体を向けた。
するとそこには……

「しっ、白石蔵ノ介!!」

「は?……なんなん?」

俺は思わずあっ、と口を塞いだ。
白石さんはというと頭にはてなマークを浮かべて俺を凝視している。でも俺は感動を隠しきれずにいた。

う、うわっ、生白石蔵ノ介やあああ!!!

「し、白石さんっ!!あのっっ!!」

「はいはい、その前に。その頭、校則違反やから。染め直――すんは無理っぽいな……ほな罰やと思てコート20周。行ってらっしゃい」

「えええっ!!?」

せっかく……せっかく本物の白石蔵ノ介に会えたというのに……
ずっとずーっと憧れてた白石蔵ノ介と会っているのに……

なんでなん………?

「ちょお自分!!なして20周ぐらいで泣くん!?」

「………え?」

いつしか俺の目からは涙が溢れていた。
やってショックやもん。初対面でお叱りとか………寂しすぎるやん。

「ずっ、だ、って……おれ、俺………〜〜ッッ!!」

「ちょお落ち着けや!!ん……忍そ…「おしたり!!」…あぁ、スマン」

とりあえず部室行こか、と白石さんに促されて二人で部室へと向かった。

部室の真ん中に設置してある長ベンチに腰かけて、俺が落ち着くまで白石さんはずっと背中をさすっていてくれた。

「ど?少しは落ち着いたか?」

「ふ、ー…あ、りがとうございます……」

「ん。あー……なんや、俺も初対面なんに怒鳴ってもうて悪かったな。俺、完璧主義やからそういうトコ見逃せへんのや」

「あ、いえ……俺が悪いんで謝らんといて下さい」

完璧主義……なんとも白石さんらしい。
せや、俺が悪いんや。よく考えたら、そんな本入部初日に都合よく物事が進む訳がないわな。
やっぱりさっきの先輩だって俺を嵌めたんや。くそ、むかつく。

「自分……忍足クンやっけ?」

「……、はい」

「俺に何か言いたい事あったんやないん?」

「………っ、」

言いたい事、伝えたい事、今までの想い、全て吐き出してしまいたい。でもなんだか言えなかった。
それはひとつ、疑問が浮かんだから。
こんな初対面なのに、いきなり告白しても良いのだろうか?と。

「………」

「…なんや?あらへんのか?」

「………」

「もう怒らへんから、そないに警戒せんで……な?」

白石さんが少し眉をひそめて言った。

このままだと逆に白石さんを困らせてまう…!!どうせ伝える事は変わらんのやから今言っても同じやろ!と俺お得意のポジティブ思考で思い切って口を開いた。

「………はい。おれ、白石さんの事、ずっと……「白石部長!!」!!?」

バタン!とドアの開く音と共に聞こえてきた白石さんを呼ぶ声。

そんな、よりによってこんな時に……

「なんや!?どないした?」

「遠山が……」

「まーた金ちゃんか……俺の毒手が唸るで!!って伝えとき!!今すぐ行くから!」

え、白石さん行ってまうの…?伝えられんの…?俺。いま、二人きりなのに……絶好のチャンスなのに…!!

「じゃあ悪いけど忍足クン、俺行かな……話は後でもえぇ?」

「……、は…、っ!」

「スマンな!じゃ、」

ドクン、ドクン、ドクン

白石さんが居なくなった今、一気に緊張の糸が緩んだ。
でもそれと同時に後悔がやってきた。

「…っ、しらいしさん……!!」


………伝えな!!!


俺はいち早く白石さんの元へ行くために足を精一杯急がせた。
一応、運動会ではいつも1位だったから足には自信があるのだ。


「し、白石さん!!」

「ん………あ?忍足…クン?」

「あのっ!!!」

俺の声が大きい所為か皆がこちらを向いた。だが今の俺には関係なかった。

「白石さん………、おれっ、白石さんの事がす、す、す、好きですっっ!!!」


最後に見たのは白石さんの驚いた顔。
最後に聞いたのは周りの驚いた声。

それから“ドタッ”という音を立てて俺の意識は飛んだ。


次に目覚めたのは保健室。視界に映るは白石さん。


そんなこんなで白石さんと付き合う事になるのは、また別の話。



end.



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

また別の話………って何でだよ!!
という事で!!←←はい、なんだか中一謙也→中三白石みたいになってしまいました………蔵謙で先輩×後輩をリクエストしてくださったのに………すみません。期待に添えなさすぎてもう成侑さんの前でジャンピング土下座したい気分ですよ←←
あ、因みに金ちゃんと光は二年設定です^^(要らない情報)

こんなんになってしまいましたが、二万ヒットリクエストありがとうございました!!



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