18

「し、白石さんっ!!」

「!!けんや!」

いきなり調子の悪くなった身体を無理矢理動かして、白石さんの元へやっとたどり着いた。
そう、俺は流石に白石さんにも光の事を相談してみようと思っていたのだ。

「だ、大丈夫ですかっ!?」

「おん、大丈夫。心配かけてスマンな………それより、なぁ謙也。やっぱ俺、気になんねん…誰と会っとるん?」

「……っっ!!?」

何でわかった…………?

だけどどちらにせよ白石さんには話そうと思っていたことだから良いのだが、少し複雑だ……。

「……」

「言えへんのか?」

「ちが……います………けど、、」

言うと決めていたハズなのに。何故か俺の口からは言葉が出てこなかった。
どうしても話してはいけないと思ったのだ。それは俺の頭の何処かで警報が鳴っているような感覚。
…………危険な感じがした。

「………謙也…」

俺を見兼ねた白石さんがゆっくりと意を決したように口をあけた。

「そいつ、黒髪のやつなんとちゃう?」

「!!!」

白石さんはやっぱりわかっていたんだ。
俺だって最初は忘れていた。
けど、次からは光が黒髪なのを重々承知で会っていた。
やって光、普通の人間なんやもん。ヒト……ましてや黒狼なわけがないんやもん。

「な、なんで…そう思うんですか…?」

「……っ、そないな理由は後や!…多分、体調悪なったんもそいつの所為やと思う。
…………謙也、もうそいつと会うんやめや」

「え、っ」

光と会うのを、止める?
無理だそんな事出来ない。出来るハズがない。

だって、

「二人の間に何かあったんはわかっとる。ただ、俺は謙也を危険な目にあわせたくない…謙也を、守りたいんや」

「……、」

「なあ、謙也……、俺、謙也ん事……好きやねん」

「っ、……い、や……!!」

「……え?」

嫌、というのは白石さんの告白の返事ではない。
だって俺も白石さんの事好きって気付けたんやもん。
でも何でこのタイミングで好きだなんて言うの?
いくらなんでもタイミングが悪すぎる。今の俺の頭の中は告白なんてものは微塵も無くて、あるのは光の事だけやった。

いくら白石さんの言い付けでも、会わへんなんて絶対無理。

でも決して、俺が光に会わんと光が一人になってもうて、可哀想だとかそういう感情ではなかった。
だって、光と俺は上辺だけだけど兄弟って約束し合った仲で、俺が光を守っていく、て決めたんや。やのに……、
守られてどないするんや…俺。

確かに光は黒髪や……けど絶対、黒狼なんかやない。

「会わへんなんて無理です!!」

「っ、謙也!!」

俺はその場から逃げ出すように走った。
というか逃げ出したかった。

そして、その時の俺の中の感情には、白石さんへの恋愛感情なんてこれっぽっちも無くなっていた。

ごめんなさい、白石さん。
守ってやりたい、って言ってくれたの嬉しかったです。
好き、って言ってくれたの嬉しかったです。

でも、俺、それ以上に光が大切みたいなんです。