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白石さんは光を知っとるんやろか……?

白石さんに不思議な質問をされた。でも俺は嘘をついてしまった。正直、自分でもビックリしている。嘘なんてついた事なかったから。なんだか光を白石さんに知られてしまったらヤバい、て思た。なんやわからんけど。

その後、白石さんが体調悪いって休みに行って、俺の中のヘンな感情がまた出てきて俺が思っとる以上にめっちゃ心配しとって、嘘ついた事めちゃくちゃ後悔しとって……付き添って行った方がえぇ、て思ったんやけど………………、逆にチャンス、とも思った。
白石さんにはホンマに悪いんやけど、この時間は前に光に会った時間とまるまるかぶっていて、タイミングが合えば光とまた会えるかもしれないんや。
やから今日は本当は無い筈の落ち葉掃きを口実に"あの場所"へ行ってみようかと思う。



「光ー?」


……返事はなかった。やっぱり都合良くは行かないか、と帰ろうと思った瞬間やった。


「けんや、さん?」


「っ、ひかる!!?」


そこに黒髪のあの子、そう、光は居った。


「うわー久しぶり?やんな?」


「別に1週間ぶりぐらいやないですか……はしゃぎすぎやし」


「光ぅ!ちゃんとメシ食っとるか?風呂入っとるか?」


「全部ちゃんとしとりますから大丈夫ですわ……謙也さん過保護すぎますわ」


「えー?せやかてっ!!」


良かった良かった!元気そうで!久しぶりに見る光は相変わらず元気旺盛……には見えなかったけど、いつもの光が見れて俺は満足だ。そして安心もした。


「な、謙也さん、」


「ん?」


「ぎゅー」


「へ?」


光はいきなり何かをせがむような目で俺を見てきたと思えば、……ぎゅー?ぎゅーって牛?……ハッッ!!もしかして、さっき食っとるか聞いたから食うてないっちゅー話で牛食わせろっちゅー事やろか!?いやいやいや牛は高いやろ!!……光は松阪とかねだってきそうやな……


「無理です!牛は勘弁やで光!!美味しい豚の店知っとるからそこ行こ!な?」


「………なに言っとるんスか?ぎゅーですよ?」


「せやから……牛、やろ?」


「ハァ……ちゃいますよ、こーゆー事です」


そう言って光は俺に抱きついてきた。
あぁ、ぎゅーって……


「ぎゅーって効果音の事かいな」
「抱き締めてって言うと恋人みたいなんで」


「あっ、アホ!!子どもが恋人とか言うんやありません!!」


「やから子どもやないし!」




クラッ、




「……、え?」


なんだか貧血?のような状態が俺を襲う。なんやコレ……?


「謙也さん大丈夫ですか?」


「ん?あぁ、大丈夫……やで」


光には心配をかけるわけにはいかないから軽く流したけど、実は結構頭痛酷い。視界歪んどるし……


「ちょ、スマン。今日は一旦帰るわ……」


「大丈夫ですか?」


「お、ん……」


「ほなら、………………また、来てくださいね」


「あぁ、またな」


光に別れを告げ、林の中から急いで神社へと戻った。

今頭ん中は真っ白。
だけど、白石さんが気になったから急いだ。俺の体調より白石さんの体調はどうやろか、とか考えとった。

嘘をついた事、やっぱり謝ろうと思った。そして今までの事、全部話す。
多分俺は白石さん以外に嘘をついていても謝ろうとか思わん。

白石さんやからだと思う。
その時、俺の中で白石さんは特別な存在なんだなと思った。ヘンな感情っちゅうんは好意……つまり白石さんの事好きなんかな、とも思った。