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※白石視点




おかしい………
謙也から獣のニオイがした……


謙也が袖を破いて帰って来たと思たらなんや獣のニオイするし、謙也は何かを隠しとるし……


謙也には言わなかったけど、ヒトが暴走するのは敵がいるからなんや。
つまり謙也はさっきまで敵と一緒に居ったっちゅー事になる。でも謙也みたいな人間がヒトと接触して喰われないくらいだから雑魚かななんて思たんやけどかなりニオイが強かった。なんせこの俺が気を失った程やからな。
そこで疑問。
なんでそのヒトは謙也を喰わなかったのか…?
謙也みたいな性格の人間なんて一発で喰われそうなタイプなんに……


それか俺の忠告を無視して謙也が狼と関わったか…?
…いやいやいや、"あの"謙也やし、そないな事考えられへん。
じゃあどうして………?

「白石さん?どうかしましたか?さっきから手が止まってますけど……体調でも悪いですか?」


「う?あ、あぁ、何でもあらへんよ!!」


……謙也のせいで悩んでいるというのに……!!………ここは謙也に直接聞いてみるか…?でも怪しいと思われても困るし……って、いや、何も困らへんやん。何思てんねん俺。別に怪しがられてもえぇやん。うん、えぇ。


「け、謙也…ここ最近誰かと会った?」


「え…?誰か、て?」


「誰かは誰か、や!!俺が知らんから聞いとるんやないか!このアホ!!」


「す、すいません…!!……特に無いですけど?」


「!!………そ、か。変な事聞いてスマンかったな。」


………嘘、つかれた。
絶対嘘。これは断言できる。謙也は顔に出やすい性格やし、声裏返っとったし、目が泳いでた。漫画みたいに、面白いぐらいにわかりやすかったなぁ、今のは。
……謙也に嘘つかれてショックだった、俺。馬鹿みたいやけど。自分の事は一番自分がわかっとるから、多分そう。だって心ん中モヤモヤしとるもん。

なんかめっちゃ……――――――嫌。


「謙也、悪い。ちょお休んできてえぇ?」


「え!?やっぱり体調が……?大丈夫なん?」


「おん大丈夫………直ぐ戻るさかい、仕事よろしくな?」


「お、おん……」


はは、謙也が俺ん事心配してくれとる……ちょおモヤモヤ晴れたような気がするわ。
はぁ、いつの間にか好きになっとったんかな?謙也の事。認めたないけどしゃあないわ。こんなん確定やん……あーあ、俺らしくあらへんな……。


……でも、だからこそ俺は知りたい。謙也からの獣のニオイの訳を。
俺、こう見えても好きな人はちゃんと自分で守りたい主義なんや。

誰だってそうやろ?
好きな奴は守りたい。
……そう思わん?