09

 


「とにかく、黒髪のヤツ注意っちゅー事で!
見たら無視。んで逃げる……えぇな?」


「お、ん…」


「ほら、もう帰りや!なんや長話してもうたなぁ……」


「あ………………」


気づけばもう11時すぎ。もしも家に親がいたら怒られているところやった。一人暮らしでよかったぁぁ!!


「あー…あとお前の事もう“忍足さん”なんて良い子ちゃん呼びせぇへんから」


「へ?」


良い子ちゃん呼び、て……まぁホンマはこないな性格やからなぁ…えらい二重人格やでホンマ。
二重人格っちゅーよりは仮の自分やな。あの綺麗な笑顔も営業スマイルやったワケやな…なんや軽くへこむわ………


「謙也、やったっけ?」


「ぇ!?は、はいぃぃっ!!?」


「これからそれでいくから…わかった?」


「は、け……謙也っ!?」


「そ、んじゃ謙也。この事は絶ッッッ対に外部にもらすんやないで?」


「ももも勿論ですっ!!」


バラせる訳あらへんやろこないな事………言ったとしても信じてくれへんて!


「謙也て呼ぶ言うたけど、バイトの時間……営業時間は忍足さんて呼ぶからな。
この性格は自分も思っとるかもしれんけど、封印しとるから」


―――だろうな。
俺も最初びっくりしたもん。


「じゃな、謙也」


「あ、はいっ!!」


名前で呼ぶ言われて、そんで名前で呼ばれてからずっとドキドキしとる?なんや鼓動がヤバい。


俺、違う呪いにかかったかもしれん……