08

 


「んー、もうちょい分かりやすく言うたらオオカミとキツネの陣地争いやな」


オオカミとキツネが対立しとるなんて聞いた事がない。
キツネはタヌキと対立やないん?赤と緑で………………っと、それはまた違う話やった……
陣地争いっちゅー事は……!!


「白石さん戦ったんですか!?」


「そこまで激しないけど……まぁそうなるわなぁ…ん、せやな。んで、油断しとったらやられた。」


「さいですか……」


白石さんは悲しそうに答えた。まるでさっきの表情が嘘のようだ。
まぁ争い……激しない言うてもちっちゃな戦争みたいなもんやもんな、悲しいんは当たり前やんな。


「あの、その呪いって解けるんですか?」


「その為にここに居るんや。まぁ狼自体は絶滅した言われとるけど、狼と黒狼はちゃうからな……まだこの現代に居る。いつ現れるかはわからんけど………………」


白石さんは呪いを解くためにここに居る?
黒狼は現代に居る?


「俺、も…呪われてまうん………………!!?」


「いや、そないな事は滅多に無いやろ。あ、その黒狼も俺と同じように見た目人間やから気ぃつけや。しかも黒髪っちゅー事しかわかっとらん。俺に呪いをかけたんは男やったけど、ここに居るんは男か女かもわからんからな」


「ひゃあああぁぁ!!恐!俺、どないすればぁぁぁ!!!」


「お前いちいち声でかい。っちゅーか叫びすぎ!!」


やって呪われてまうかもしれんのやろ!?
あ、でも……


「もしもその……黒狼に会った場合、交渉とかしたらアカンですか?
呪い解いて下さいー……とか。」


「はぁ!?」


すると白石さんはいきなり恐い人相でこちらを睨んできた。
え?俺なんかまずい事言った?


「アホッッッ!!!お前やっぱホンマにアホや!人間のお前がそないな事したら………………………………喰われるで?」


「くわ、れる?」


「人間界で言うたら殺されるっちゅー事やな」


「ぎゃああぁぁぁっ!!」


うっわ恐!めっさ恐!!最初白石さんも殺すとか何とか言うてたけど、何や迫力が違うわ……!!流石、あのプライドの高そうな白石さんに呪いをかけただけあるわ…

「あ……せや、その黒髪のオオカミに会って話したらアカンで?名前教えあったり……ましてや誕生日を教えるなんてもってのほかや」


「え、何で誕生日?」


「黒狼はちょお特殊なんや。過去を変える事を出きるから……過去に行く…とでも言ったらえぇんかな、」


「……で?」


「アホ!!やから喰われる言うとるんやて!!」


「え!?」


喰われる、てフツーにがぶって噛みつかれて襲われるとかやないん?


「過去を書きかえられて自分の存在自身を消されるっちゅー事や」


「書き、かえ……」


「せや。例えばお前が生まれる時に暴動起こされたらお前は今ここに居らんやろ?しかもお前のオカンも道連れやで」


その事を考えただけでゾッとした。なんや殺されるよりも消される方が何倍も恐ろしいな思て。


俺は思わずその場で硬直してしまった。
心の底で、俺は少し黒狼を甘くみていたのかもしれない。