一人と独り
「あー財前は家どっちなん?」
それは帰り道での一コマ。いきなりだが、俺とユウジ先輩は今一緒に帰ってます。でもユウジ先輩が別れ道の前で止まりました。
そして冒頭に戻る。
「えと、こっちです」
と、別れ道の右っ側を指差す。
ユウジ先輩は一瞬悲しそうな顔を見せ、しゅんとした表情になった。
「そ、か……じゃ、ここでお別れやな」
「え、っ!?」
俺ん家とユウジ先輩の家って思いっきし反対方向なんだ………!!
もしかして、ユウジ先輩が一瞬見せた表情……
ユウジ先輩……寂しいんかな?
「じゃな、財前」
「ちょ………!!!」
このままじゃ駄目だろ自分!!今度こそ上手くいかせるんだろ!?
大切にしてやるんだろ!?
「待って!!!」
うーわ、最悪。
敬語敬語。敬語忘れてる。
「………くだ、さい」
ユウジ先輩は目を丸くしてこちらを見ている。
もうやだ俺、………。
「はは、なんや財前………寂しいん?かわぇぇやっちゃな!」
寂しい………?
寂しいのは貴方じゃなくって?
「ユウジ先輩……家帰ったら何、します?」
「………え、メシ食う」
「せや、ごはん……ごはんも作ってくれる人居らんのですよね」
「え、何で知って……?」
「よし、決めた。今日俺、ユウジ先輩の家に泊まりますわ。」
うわ、何言うとるんや俺!!めっちゃ恥ずかしい……やけど、やけど……
「う゛ぇぇっ!!?」
「駄目ですか?」
「………っ、駄目、やない……」
「ごはん、作ったります」
すぐユウジ先輩は目をそらしてしまったけど、小さく呟く“ありがとう”が俺には聞こえた。
(一人が独りへ
出来ること。)
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