仮入部期間が始まった。 まぁ、“仮”やから適当にボール上げて、それを打たせるっちゅー簡単な練習の繰り返し。
仮入部の時は1年にも打たせてはやる。やけど、いざとなって入部すると1年は最初から打たせてもらえないというトコロが落とし穴。最初は体づくりからはじまるからだ。
かつて自分もそうだった。最初は外周やら筋トレやらボール拾いやらで、なかなか………というか全く打たせてもらえなかった。先輩のプレイを見ているばかりの自分を思い出す。

素質のある奴、強い奴がコートに立つのが当たり前。
“勝ったモン勝ち”が
スローガンな四天宝寺中。
人より優れている白石は当然のように俺らの誰よりも先に選ばれた。

白石が一足先に打てると決まった時は凄く憧れに近い気持ちがよぎったけれど、悔しい、という気持ちも同時に自分の心をよぎった。
…………ん、何やろ?
考え事しとったからかな?頭、クラクラしてきおったわ……何、か気持ち悪、い、―――――――――と、視界いっぱいに青い空が入り込んで来た。
別に上を向いた訳ではない。

次の瞬間、、、



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

「っ、はぁ!?謙也が倒れた?この忙しいときに!?…………っ、ハァ……あり得へんわ……。おん、わかった俺一応、保険委員やし行くわ。あとはよろしくな、ユウジ、小春、銀」


(ったく、何やっとんねん!!あんのヘタレ!!絶対ボーッとしとったでアイツ。やけど今日暑いし熱中症か何かやな。
しっかし知らせてくれたんが財前君……運んでくれたんも財前君……て、何でやろ?)


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ぱち、
(ん、天井……白い……薬のニオイ?……家のニオイ。ベッド……かたい。ここ……?)


起きあがって辺りを見回す。あぁ、俺運ばれたんやな。どうせ白石あたりが運んでくれたんやろ、と白石をさがす。


「「!?」」


「ざい、ぜ……やなくてっ光!?」


「あ、起きたん?一応、大丈夫ですか?」


「一応は余計やて!……っちゅーか光がココまで運んでくれたん?」


「部長あたりやと思ったやろ、自分。」


「あ、え、スマン……堪忍…………あと、おおきにな?」


「…………っス、」


「あっ、そや!ダブルスの件、考えとってくれた?」


「は?まだ言うとったんスか?」


「へ?」


「ダブルスとか、、はっ?ふざけとるんすか?まだ仮入部中やし。ホンマ……意味、わからんわ…………っ!!」


「えっ!?ひか、る?」

光は泣き出してしまった。小さい顔をぐしゃぐしゃにして。え?俺?
「やって忍足先輩……、俺ん事誘って…なんや他の奴に悪口言われたらかなわんし、俺っ、!!
…俺んトコから離れて欲しくて、、…………すんません。」


「べ、別にえぇけど…………何でや?光ちょっと口がアレやけど……良い子やん。」


「忍足先輩はお人好し過ぎるんですわっ、俺、なんて、、ただ周りの奴に悪口言うたり、態度悪うしたり……」


「光、それは違うと思うで?」


「え、」


「悪口言ってまうんは、ただ素直になれないだけで、態度悪うしてまうんは、その奴に思ってる事の反対を言ってまうんやと思うんや、絶対そう。違う、なんて言わせへんで?」


「…………」


「やから、イコール…」

ホンマにそう思ったから言うただけ。
ホンマにそれだけ。
深い意味は無い、これからのチームメイトとして捧げた言葉…………………………………………の ハズだった。


「光は俺ん事好きっちゅー話や!!」


「俺が?謙也さん、を?…………ないわ。無い」

「ある。あるったらある。そうに決まっとる」



ガラッ、


―――――――……と、 勢い良く保健室のドアが開かれた。


「へ、っ、白石!?」


「謙也が倒れた〜、て聞いて来たんやけど……お邪魔やったみたいやな?」


「ち、違っ、」

とは言っても保健室には泣いている光。しかもあろうことか俺のジャージを力強く握り締めている。「何が違うん?」と、白石は妖艶な笑みを浮かべた。
そりゃこんなんじゃ違うも何も無い。


「謙也も元気そうやし、邪魔モンは退散するわ。」


ガラ、と出ていく間際に白石は、
「光は俺ん事好きっちゅー話やぁ!!」
と、言い
悪戯な笑みを浮かべた。

「〜〜〜〜〜〜!!!」

聞かれてた!!絶対聞かれてた!!盗み聞きとか趣味悪いで!!白石!!

よりによって、しらいしに……………………、、


「ぅ、あ、光……大丈夫なん?その、心情的に……?」
自分の心を落ち着かせ、光の心配をする。
でも落ち着かせたつもりが、光にはバレバレだったようで、


「け、んやさん………、部長ん事……?」


「どぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!」

「やっぱ好きなんや」


「言うなやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「すき、なんや……」


と言った光の顔は何故か 悲しんでいるように見えた。
泣いているからか?


「好きとかは、まだわからんけど…………フツーの友達よりかは白石のが全然すき。一緒にいたいと思う、んやけど。それだけ……それだけやから!!」


「ふーん……」


「って!何言ってるんやろな!!俺!!スマンな光っ」


「忍足先輩」


「ん?」


「…………あの、忍足先輩、俺、レギュラーに上がったら忍足先輩とダブルス組みたいです。」


「ホンマ……!?」


「はい。絶対レギュラーに上がったりますんで。」


「おう!!早よ光もこっち来いや!」


「あと、やっぱり忠告しておきます。」


「?」

「俺に構うんはアンタぐらいですわ」


「そんな事あらへんと思うけどなぁ?」


「やって俺、白石部長と忍足先輩としか喋ってへんもん」



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