気付けば放課後。
残ってるのはカギ当番のユウジ先輩と、部活日誌当番の俺だけ。今日は何故か書くことが多く、ユウジ先輩に待ってもらっている。
そう、俺はここでやっと気付いた。ユウジ先輩だけに祝ってもらっていない、という事を。
しかし、ユウジ先輩はというと、祝おうとする動きすらも見せず、ただ日誌を書く俺の横に座っているだけ。本当にそれだけで何もしていないし、何も喋ろうともしない。 (もう、忘れとんのやな)
俺から喋るワケにもいかないし、、
「「…………………」」
―――――沈黙が続く。
俺はそれに耐えられず、早く終わらせて早く帰ろうと思い、ペンの動きを急がせる。
部室には俺のペンの音だけが響いている。
早よ…………!!
早よ終われ!日誌!この時間!!
「なァ、財前」
「せせせせ先輩っ!?」
いきなりユウジ先輩が話しかけてきた。
「そないに驚く事ないやろ…………えっと、俺が今日財前に何も言わんくて気になんなかったん?財前は。」
え、それって……
「誕生日……?の事っスか……?」
「せや、一応言っとくけどなぁ別に忘れてたワケやないからな!俺。」
「え、そうやったんですか?てっきり忘れてたモンやと思ってましたわ」
「忘れるワケないやろ!?………………………………俺の誕生日より大切な日やし。」
「へ?最後のほう……何て?」
「いっ、いや!なんでもあらへんっっ!!あ!財前!!」
ユウジ先輩は自分のバンダナを外し、俺の目を隠すように被せた。
「前、見えへんのですけど?」
「いや、それでえぇんや!!…………………………………………財前、」
「はい?」
「オーディオセットとか…………無理やから…、堪忍な!!」
「…………!!!」
それは一秒にも満たない程の短い時間。
触れるだけのキス。
「は、ははっ、ユウジ先輩……」
「っ、恥ずかしいんやからバンダナはず、すんやない、でっ!?」
俺は思わずバンダナを外し、ユウジ先輩を押し倒した。
「もう……不安に、させへんといて………下さいっ」
「……………………おんスマンな……誕生日、おめでとう」
ユウジ先輩と、
誕生日。
(ずっと、大好き。)
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