お目覚め質問攻め
「………んぁ?」
目を覚ますと俺は知らない家の炬燵でぬくぬくしてた。
「何処だここ…?ってか炬燵あったけぇー」
炬燵布団にもぞもぞと潜り込むと冷えた体を優しく暖めてくれる。やっぱ炬燵ってすげぇ。
「クルゥッ!」
「お、コロロ…と誰だ?」
「あ。気が付いたんだ!!」
頭の方からコロロの声が聞こえたからそっちに顔を向けるとコロロと知らない女の子が居た。
「えー、はじめまして。私は巧本椿です。君はホロホロ君であってるよね?」
「そうだけど…なんで俺の名前知ってるんだ?あと此処って椿の家?あー、」
「うんうん、質問したいことは沢山有ると思うんだけどとりあえずご飯にしようか!!質問には食べながら答えるからさ」
「あー、あと」と言葉を続けようとすると苦笑いで言葉を遮られた。
さっきまで炬燵の暖かさに気をとられてたが考え出せば聞きたいことが次々と出てきた。
「「…いただきます」」
食卓の準備ができ挨拶をした後、目の前の席に座った椿に話を切り出す。
「で、質問していいか?」
「答えられる範囲でなら。」
確認が取れたところで俺は質問し始めた。
「じゃあ、ここ何処?」
「私の家です。」
「なんで俺此処にいんの?」
「それは君が道路に倒れてたから私が連れてきたの」
「た、倒れてた!?」
「うん。そういえば怪我とか調子悪い所とか無い?雪に埋まってたし熱とか出てない??」
眉を軽く下げ心配そうな顔をした椿が俺の額に手を近づけてきた。
ちっ、近いっ!!
「だっ、大丈夫だから!!」
「え、そっか。なら良いんだけど…」
急だったからちょっとドキドキした…じゃねぇ!!
「ちょっと待て?俺が倒れてたならどうやって此処まで運んだんだ?他に人居んのか?」
「私一人だよ。普通に背負って運んだんだけど」
は?
女子が一人で担げる程俺軽くなかったよな?
「うっそだ〜、いくらなんでも見た感じ椿背小さいし無理だろ」
「あ''?」
あ、顔引きつった。
「ホロホロ君ちょっと立とうか?」
「え」
早くと急かされて立ち上がると隣に椿が並んだ。
もしかして再現しようとしてんのか?
若干目が座ってるんだが…
「ほら、真っ直ぐ立って!!…さっきは距離あったから担いだけど、今ならっ」
そう言いながら椿は、
「!??ちょっ!!!!!」
俺をお姫様抱っこした。
「これで私が連れてきたのが証明出来たかな?」
「……はい」
顔に軽く影を創りながら椿は笑いかけてきた…こぇえ…。
俺達は座り直すと今度は椿から話を切り出した。
「次の質問は?」
「一番聴きたかったんだけど、なんで椿は俺の名前を知ってる?」
「クル?」
質問をすると同時に今まで俺の後ろに居たコロロがまるで自分も質問するみたいに鳴いた。
まぁ、椿には見えも聞こえもしな…
「そうだ、コロロちゃんにもまだ話してなかったもんね」
「!?……つ、椿お前コロロ見えてんのか!!???」
「ばっちり見えてますよ」
「クルゥ!!」
「もしかしてシャーマンだったりすんのか?若しくはパッチの…」
少しの警戒を込めて椿に問い掛ける。
「違うよー、見たのはコロロちゃんが初めてだし。」
「……ふーん」
緊張した俺がバカみてぇだ。
別にシャーマンじゃなくても霊感あるやつなんてゴロゴロ居るだろうに、シャーマンファイトが始まってから変に張り詰めちまってる。
「そんで、質問の回答だけど…怒るかもしれない」
「どういう事だよ?」
再び緊張が走る。
怒るってことはやっぱりシャーマンファイト関係か?
「混乱するかもしれない、理解できないかもしれない。でも私は嘘はつかないから信じて欲しい」
「……信じるか信じないかはお前の話を聞いて決める」
「わかった…。ホロホロ君、君の気絶する前の記憶は何処で終わってる?」
「あー…、」
あれ?俺シャーマンファイトがあるからイケイケ袋に行って、それで…
「…麻倉葉と戦ってた。最後の攻撃を仕掛けて、それから…?」
「そこから記憶が無いんだね?」
「…あぁ」
あの試合はどうなったんだ?
勝ったのか?
負けたのか?
それとも引き分けか?
そんなことを考えてると不意に椿が立ち上がりカーテンの掛けられた棚から一冊の漫画を取り出し、俺に差し出してきた。
その本のタイトルは
「………シャーマン、キング?」
「クルッ?」
「そう、シャーマンキング。君達はこの世界の人間じゃないんだよ」
…意味わかんねぇ。
「その巻には麻倉葉とホロホロ君の戦いが描かれてる。ほら、このページから」
「…なっ!!」
漫画には俺と麻倉葉らしき人物の台詞から攻撃、一つ一つの動作がなんの間違いもなく描かれている。
「これが私が君達を知ってる理由」
「…それじゃあ、俺達はただの漫画の、架空の登場人物なのかよ…!?」
「……確かにこの漫画に描かれてるキャラクターは架空の人物かもしれない。でも、今君達は此処に存在してる。ちゃんと生きてる人間だよ。架空なんかじゃない」
「…………」
「それに、この世界ではホロホロ君達が漫画の中の人だけど逆もあるかもしれない」
「…逆?」
「そっちの世界では私の方が漫画の人間だったりするかもしれないってこと」
椿は淡々と可能性を言ってのけた。
俺ではなく自分が架空の人物であるかもしれないと。
「お前はそれで納得できんのかよっ」
「まずはドッキリかなんかだと疑うだろうね。で、なんの種も仕掛けもなくてそれが真実なら泣くね」
「だったらなんでそんな風に考えられんだよ!!!!!!」
「じゃあホロホロ君、君はこれからどうするの?この現実を見て自分の存在を不定して、それからどうするの?」
そうだ、俺はどうしたらいい?
もし本当にこの世界が俺の居た世界じゃなかったら?
俺の夢は?
フキ畑は?
シャーマンファイトはどうなる?
シャーマンキングには、なれない?
結論が出た瞬間俺は絶望した。
「………っう」
自然に涙腺が弛む。
泣きたくなんかないのにっ…
「ホロホロ君」
「……なんっ、だよ」
「泣かないで、ホロホロ君。大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なんだよ!!!!!無責任な事言ってんじゃねぇ!!!!!!」
感情の抑えが効かない。
椿に怒鳴ったってどうにもならないのなんてわかってる。
でもこの感情を何処に向けたら、どうしたら抑えられんだ。
「確かに私は無責任な事を言ってる。でもさ、ホロホロ君。君がこっちの世界に来れたって事は帰ることもできるんじゃないかな?」
そんな風に考えることもできるんじゃない?
そう言いながら椿は俺の頭を撫でた。
「帰れる…?」
「そうだよ、帰れる。私も協力するからさ、一緒に帰れる方法を探そう?」
「………」
なんでコイツは俺の為にそんな事を言ってくれるんだろう?
唖然として椿を見ていると、
「私はね、君が夢を追いかけて頑張る姿が大好きだったんだ…だからその希望を捨てて欲しくないの。ホロホロ君はシャーマンキングになるんでしょ?こんな所で諦めちゃうの?」
その言葉にハッとした。
そうだ、ここで諦めたらシャーマンキング所か夢すらも叶えられない。
横に居るコロロを見れば不安そうな顔をして俺を見ていた。
俺にはまだコロロが居るのに、コロロ達を幸せにしなきゃなんねぇのにっ
「俺はっ、諦めねぇ…俺にはでっけぇフキ畑を作んなきゃなんねぇ夢があるんだ!!!!」
「そうだね、それでこそホロホロ君だ!!」
椿は俺の頭をなで続けながら褒める。
なんか恥ずかしくなってきた…
「…さっ、さっきは怒鳴っちまって悪かった。これからよろしく…ってか頼んでもいいか?」
「もちろんだよ!!拾ったからには最後まで責任持つよー」
「俺は犬か!!あとさ、もう撫でるの止めてくんね?恥ずかしいんだけど…」
「えー?止めたらまた泣かない?」
「なっ、泣かねぇよ!!」
人を子供扱いしやがって…
冗談を言いながら椿は俺の頭から手を離した。
すると今度は俺の手を握りだした。
「なっ」
「改めてよろしくね、ホロホロ君」
「よ、よろしく…」
なんか色々照れ臭いが、俺はこれから椿に世話になることになった。
「ところでさ、椿」
「なに?」
「椿って年いくつ?なんかやけにしっかりしてね?一人暮らしとか言ってたし」
「そりゃあ、22にもなれば一人暮らしくらいするでしょ」
「にっ!?」
「なによ?」
同い年位だと思ってました…。
14.01.26
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