雪と水色
1月、雪の降るとても寒い夜の事だった。
年末年始、休みの間に貯まった仕事をやっと片付け久しぶりに今日は家に帰れる。
お腹すいたし寒いし…鍋でも作ろうかな…。
「…あっ」
そういえば醤油きれそうだったわぁ…早く気づいて良かった。
2つ十字路を抜け、右に曲がればスーパーがある。
「………おっ?」
が、1つ目の十字路を通りすぎようとした時、視界の端に何かが写った。
二度見してみればそこには少年が倒れている。
「え、……えー…」
大丈夫だろうか?
え、マジどうしよう。
突然の出来事に頭がついていかない。
普段なら直ぐに救急車を呼ぶところだが私の目は少年に釘付けで次の行動に体を動かすことができない。
…何故なら少年の格好が普通じゃないからだ。
パーカーは別に変じゃない、ただこの寒さの中で半ズボンは…まぁ、まだ許せる。
問題は髪だ。透き通るような水色。
普通の生活をしていたらこんな色にはならないだろ…例外があるとしたらレイヤー、バンドマン、不良あとは外人か?いや、でも外人って言ったって染めてるでしょ。金や銀はあってもここまで綺麗な青はそう居ないんじゃないかな…。
そして一番あり得ないのが、どこかこの少年に見覚えがある。
でも私にはこんな髪の人もこんな色に髪を染めるような人も知り合いに居ない。
それ以前に、私は小中高と女子校に通っていた。
だからそもそも男性の知り合い自体があまり居ないのだ。
ましてや中学生位の男の子なんて…。
とりあえず、彼の容態を見るべく近付いてしゃがみこんだ。
顔を覗き込む。や〜っぱり誰かさんに似てるんだよなぁ。いやいや、まさか……可能性があったとしたらレイヤーさんだ。レイヤーさん!!
そ、そんなことより容態確認しなきゃだよ。落ち着け私。
…顔色は特に悪くなさそう。呼吸も背中の動きを見る限り変じゃない。
脈はどうだろう?
私は彼の脈を測ろうと手首を掴んだ…違う、掴もうとした。
「クルッ!!」
「わっ!?」
なんか、なんか袖から出てきた!!
…待て、私この子にも見覚えがあるぞ。
見覚えどころじゃない。今まで現実逃避してたけどこの子のおかげで確信した。
この子らシャーマンキングのキャラクターだ…コスプレ、じゃないな。
ホロホロはともかくコロロは不可能だ。
「あ、あなたコロロちゃん…だよね?」
案の定目の前の小人は元々大きい目を見開き体を一瞬跳ねさせた。
「うーん、えっとね…敵とかではないから安心して?そこに倒れてる子ってホロホロ君だよね…怪我とかしてないの?今救急車呼ぼうと思ってたんだけど…」
なるべく優しい口調を心掛けて目の前に居る通称[コロポックル]のコロロに語りかける。
すこし警戒してるようだけど威嚇されない辺り大丈夫かな。
しかし、救急車と言う単語を聞いたとたんに緩く首を振った。
「クックル…クゥ」
「え、救急車呼んじゃダメなの?」
コロロは持っていたフキの葉の切り口を凍らせると積もった雪に文字を書き出した。
お か ね な い ほ ろ ほ ろ へ い き
必死で雪に書き込んだあとコロロはまた倒れた彼…否、ホロホロに寄り添った。
「要するに呼ぶまでもない感じか。それなら良いんだけど…ってかコロロちゃん字上手だね〜」
文字通り達筆だ。丸文字書くもんだとばっかり思い込んでたからビックリした…。あとお金ないの所はあえてスルーな !
褒められて若干紅くなってるのが可愛いんだけども、流石にアイヌ生まれアイヌ育ちといえど雪の中に倒れてる人間を放ってはおけないしなぁ。
触れてなかったけど半分くらい埋まっちゃってるんだよね〜…
救急車…病院はいらないって言ってるし。
う〜ん、…ベタだけどここは仕方ないよな。
「コロロちゃん。君らが嫌でなければ家に来ない?いくらホロホロ君でも風邪ひいちゃうかもしれないし…それとこのままじゃ下手したら車に退かれちゃうかもしれないからね」
コロロは私を見上げ、瞳を覗き込むと少し迷いながらも間を置いてから頭を下げてきた。
きっと、よろしくお願いしますって言ってるんだろうな。
「よしっ、それじゃ家に行こうか。……っ、地味にホロホロ君重いねっ」
力には自信ある方だけどやっぱり人一人背負うのはキツいものがあるわ。
よっこらせっと、声を出しながらホロホロを背負い直す。
泣き言言っても家に着く訳じゃないし
、気合い入れて帰りますか。
そして再び私と新たに少年、小人は帰路に着くのだった。
14.01.26
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