月島の第一印象は、「懐いた犬を飼ってるデカイの」だった。



「あああどうしよう愛玖、クラス離れちゃったよ…」
「あーあんた5組か。でも隣じゃん、あたし4組だし」
「やだよー!愛玖ー!!」
「会えなくなるわけじゃないんだから泣かないの!」


中学から一緒の友達とクラスが離れた。
帰る方向も同じだし隣のクラスではあるけれど、彼女の寂しがりな性格が影響してかはわからないけれど泣き出してしまう。


「ツッキー!4組だよ、同じクラスだ!」
「…あ、そう」
「また宜しくねツッキー!」
「山口、うるさい」
「ごめんツッキー!」


…こうして宥めるのは幾度目か、なんて考えているそばから煽ってくるなぁ。
くっそこのデカイ奴許すまじ。
というか隣にいるツッキー星人お前が悪いんだよ。
構って欲しい飼い犬かよ。ふざけんな。
飼い主の躾が悪いからこうなるんだよツッキーとかいうデカイの。
ていうかこいつら同じクラスかよ、最悪だ。


なんとか彼女を泣き止ませ教室で座っていると目の前に影が出来た。
というか横切った。


「…げっ」
「ねぇ失礼だと思わないの、それ」
「うるさい!躾も出来ない飼い主!」
「何言ってるの、意味不明…」
「あんたとあの犬のせいであの子あんなに泣いちゃって本当にもう!」
「本当に何言ってるの?」


見下された。ふざけるな。ああ腹立つ。


「僕は別に何もしてないし、勝手に泣いてただけでしょ。人のせいにするの格好悪いよ」
「無自覚デカ物め」
「お、おい!ツッキーに何の用だ!」
「…山口、」
「おうお前山崎っていうのか、お前も飼い主に懐くのはいいけどねぇ」
「山口だ!!」


山本だか山川だか知らないしどうでもいいわ。

こうして人生ハズレくじ(盛った)の高校生活は幕を開けた。
最悪な幕開けだ。しかもデカいのは前の席みたいだ。
何で横切ったんだ。勘違いかああそうかい。


「前見えねぇし最悪」
「うるさいのが後ろなんて運悪いな」
「なんだとおいこら」


神様なんて、絶対にいない。絶対にだ。






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -