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令状1.相談する相手は慎重に選ぶ事。




「お前は好きな奴とかいないの?」
「え、いるけど」
「はあ!?マジで言ってる?」
「大マジ」


及川は時々変なことを唐突に聞く。
高校生になって、偶然同じクラスになったとき、この人が中学の時大勢の女子が騒いでいた及川徹か、と思った。私はイラスト部に所属していたため日々部活が終わっては直帰、休みの日は家でごろごろするのが最高の幸せで二次元以外の男に興味などなかったのだ。別に男が嫌いなわけではなく、ただ興味を持てるような男に巡り合っていなかっただけだ。ただ周りはそうではなく、他校の男に目をつけていた。その男こそが今私の目の前にいる男だとは信じ難い。北川第一のセッターが超イケメン。噂とはなんと怖いものだろう、違う中学にまでそんな噂がきていたとは。確かにその男は二次元から出てきたような矯正な顔立ちで、身長も高くはないが低くもない。そうか、これなら女子が騒いでいたのも理解できる。
その時点では別の世界に生きる人だと、私とはなんの接点もない人だと、結局のところ興味を持てずにいた。だけれどそうだったのは私だけだったみたいだ。いや、間違ってはいないか。正しく言い直すとすれば、たまたま及川の興味を私が引いてしまったのだ。


「あっ牛乳パン・・・」
「・・・おいかわくん、お昼忘れたの?」
「あ、いや、あるんだけどね」
「そんなに好きならあげる。私も他にあるから」
「・・・いいの?」
「いいよ。お昼は手短に済ませたい派なの」
「ありがとう」


きらきらすまいる、というやつで礼を言われた。そうか、女子はこんな彼に惚れ込んでいるのか、なんか納得。いつも本読んでるよね、何読んでるの?なんて(勝手に)覗き込んできた彼は俺もそれ買ってるよ、面白いよねなんていうもんだからつい大きな反応をしてしまって、そこから私と及川は少しずつ仲良くなった。偶然にも席替えしてもクラス替えしても近くの席になるもんだから話す機会は作らなくてもできてしまう。本当に楽しい人で、彼の周りにはいつも人が絶えない。
そんな彼の特に仲いい人はやはりバレー部の人みたいだ。それぞれクラスはバラバラだけれど、事あるごとに一緒にいるのは知っている。その中でも特に岩泉くんと一緒にいた。幼馴染らしく、小さな頃からずっと一緒にバレーをしていたらしい。及川とはまた別のタイプの人種で、思い返せば及川派岩泉派なんてものが存在していたのを思い出す。この人が岩泉くんか。なんて男前なんだろう。・・・かっこいい。


「・・・あのさ、岩ちゃんとか言わないよね?」
「あ・・・やっぱわかっちゃう?あんたには感謝してるよ、あんたがいなければ好きにもなってないし、きっと関わることなんてなかった」
「マジで言ってる?」
「だから大マジだっつの。及川に嘘ついてどうすんだ」


だよね、と嫌な目で見てくる及川にチョップを入れる。全く、一体奴はどうしてしまったんだ。



* * *



「おはよう唯華」
「おはよ」
「ねえ。あんたって及川くんのこと好きって本当?」
「・・・はい?」


朝からなんてことを聞くんだこの子は。知ってるでしょう、そんな間柄ではないと。・・・嫌な予感がする。


「なんか噂になってるよ?あんたが及川くんのこと好きなんだ、って」
「いやいやいや勘弁してくれ」


こんなことになる原因なんて、たった一人しかいない。本当に厄介事メーカーだなあいつは!一生許してなんかやるものか。





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