「大神くん」
「…苗字さん?何故こんな時間まで…」


…大神くんの帰りを待った。
案の定、彼は傷ついて帰ってきて、それでもやはり平然としていた。
どちらかといえば、私が起きていたことに驚いたみたいで。


「だってほら、大神くん、今日誕生日でしょ?」


目を見開いた。
彼らは例の如く「コード:ブレイカーに元日もクソもない」と翌日の仕事に備えて眠りについてしまった。
取り敢えず一人一人に“今年も有難う、来年も宜しくね”なんて挨拶した。
王子には頭突きされた。
…何度食らっても痛い。
未だに痛みが残ってる。
大神くんにも腫れ上がった部位を凝視されている。
辛いなぁ


「…コード:ブレイカーに、誕生日なんて必要無いんですよ」
「またそんな捻くれたこと言っちゃって。君たちだって普通にイベントくらいはいいじゃないの」


どうして彼らってこんなにも捻くれてるのかしら。
不思議よね…


「一年間お疲れ様。…色々大変だと思うけど、また今日から大神くんらしく頑張ってね」


はい、とわかりやすく袋に入れたものを手渡せば、大神くんは何を考えているのかじっと私を見ている。
…気持ち悪いな、とついでに欠伸を落とす。
そろそろ眠くなってきた。


「…開けても、いいですか?」
「っ、珍しく積極的ね…まぁ、いいけど。少し恥ずかしいな…」


目の前で開けるってどんな公開処刑よ。
どこでそんなにサディスティックなこと学んできたの?素質?
よくわからないわね、全く…。


「……手袋?」
「大神くんは手が大事でしょう?…それに、割と冷え性な気がするし。今使ってるもの、大切だと思うから…使うなら使えばいいし、使わないなら桜ちゃんにでもあげて」
…おやすみ。







時計の針が、一年の終わりを告げた。



















「なんなんだ、あの人は」


渋谷荘の入口に一人残された大神は、手に掴んでいるものを見つめた。


( あの髪型に、欠伸…何度見てもーー )


この世には既に存在しない飄々とした男の姿と、彼のコード:ブレイカー思いなところがやけに脳裏を過った。

今日は、もう寝よう。

頭を抱え自室へと足を運び、ふと立ち止まる。

ーーー明日は、刻の誕生日だったな。
何を考えているんだ、と自嘲を落とせば自らの額と体重を壁に預けた。





「ハァ!?バイトが無くなっタ!?」
「はい、対象が跡形もなく消えたみたいです。まるで何者かが動いたようですねぇ…」


口元に拳を添え、いつもの怪しげな笑みを浮かべながら刻と会話する平家。
どこか楽しげな辺り、何か察しているのだろう。
一方刻は、バイトが無くなり疑問と共に軽く苛立ちさえ感じていたが、多少は楽そうだ。


「ただいまー」
「! 名前チャン」
「わっ、刻くん」


私が帰宅するなり飛びついてきた。
犬か?この子は。
可愛らしいな。


「誕生日おめでとう、刻くん!」
「…覚えててくれたノ?」
「当たり前じゃない」


動きを止めてじっと見てくる彼の頭に手を伸ばし微笑む。
ヤッターとか言って抱きついてきたものだから少しよろけた。
一応女だよ?支えられないよ?
それでも可愛いから許してしまう。
甘いな

と、そこに大神くんがどこからか帰ってきた。


「…大神、今日バイトあったカ?」
「? あぁ。…そうだ、苗字さん。これ、使わせていただきましたよ、有難うございます」
「えっ、本当?それは意外ね、有難う」


彼の両手には昨日手渡した手袋がはめられていた。
使ってくれるとは思ってもいなかった、本当意外…。

でも、何かおかしいな。
昨日より少し傷が増えている気がするし、貼り付いた笑みもどこか違って見える。
…まさか、


「…大神くん、本当に今日バイトあったの?」
「!?」
「その様子だと、無かったみたいね…」


刻くんの顔と大神くんの顔を交互に見れば自然と笑えてきた。
大神くん、ツンデレ発揮か?
こんなことがあるなんて思ってもいなかった。


「よかったね、刻くん。素直じゃない大神くんから素敵なプレゼントね」
「ナッ…大神、お前」
「勘違いするな、昨日の場から近かっただけだ」


大神くん、色々矛盾しちゃってるよ。
刻くんもニヤニヤしてるし。
…全く、二人とも素直じゃない。

人見さんが望んだ在り方って、こういうものなのかな。
少しは人見さんの夢、実現出来てますか?
少しは近付けていますか?

少なからず、私も何か大切なものが貰えた気がする。
言い合いを続ける彼らにくすりと笑えば、目の前の二人の後ろに人見さんの爽やかな笑顔が見えた気がした。







おまけ



「名前チャン!オレにはプレゼントないノ?」
「あるよ?」
「ーっ!マジで、」
「刻くんお洒落だからね、凄く悩んだのよ…喜んでくれれば嬉しいんだけど」
「………ペンダント?」
「や、やっぱりダサかったかしら」
「イヤ、すっげー嬉しい。アリガトね、名前チャン!」
「わあっ、」


また抱きつかれた。
因みに、中にはツーショットの写真入れておきました。




*Happy Birthday To Rei&Toki! 2014.01.01

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