「好きだよ」


「後にも、先にも、名前しかいないんだ」



徹。あんたがそう紡ぐとき、どうしたって愛しさを感じられないの。
だってあんた、そんな悲しそうに。

『徹』

返事はない。

『そんな強く抱きしめなくたって、どこにも行かないよ』

幼馴染。私たちを繋ぐ関係などそれだけだったはず。
だけどいつしか、私も徹も恋心を知ってしまった。
私は徹に。…徹は別の子に、沢山。
なのに徹は、私に愛を囁く。
多分、あんたは本当の恋がわからなくなってしまっているのよ。
だって。だって、本当の恋は。
どんなにあんたが私のことを心から好きじゃないってわかっていたって、それをうれしく感じてしまうものだから。それが恋だから。
ぽたり、ぽたりと雫のように胸に愛おしさが積もる。

「もう、本気で好きになりたくない」

…うん、そうだね。

『でも』



私は、どんなあんたでも、ずっと好きなままよ。



そう伝えれば徹は、また悲しそうに笑った。




その言葉の真意は何?
(全て知ったつもりで何もわからないままね)

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