かしゃり、カシャリ。
飛び立とうとすれば、目の前の檻が、邪魔をするんだ。
「名前。仕事です」
『…』
「名前」
『わかってる』
コード:ブレイカー。
法で裁けぬ悪を裁く事が存在意義。
其れは存在しない者とされ、
自分に纏わる情報は全て抹消される。
本当の名何て、忘れた。
気付けば私はエデンに囚われる其の存在になっていた。
そして、今日も任務を果たす。
『…任務No.70736』
そう呟けば、脳裏を過る、裁いた悪。
考えれば、私が裁く悪は全て、エデンの存在を知る者だ。
エデンを裏切った者、
手違いでエデンを知ってしまった者、
エデンを潰そうとした者、
エトセトラ、エトセトラ。
如何して私はこんな事してるの?
―君の意思で此処に来たんだろう?
何故、此処に来たんだろう?
―君が来たいと望んだから。
何を望んでいたの、私は?
―其れは君の中に在るだろう?
未だ考えても、結論何て出ない。
昔の事なんて、忘れてしまったの。
消されたデータと一緒に、消えた。
いっそ、逃げてしまおうか。
そんなの、無駄な抵抗だよ。
何を思っても、エデンからは逃れられない。
これが私の運命なのだ。
『行ってくる』
「…行ってらっしゃい、名前」
平家から張り付いた笑みと共に額に唇を寄せられれば、それもまた愛の無いもので。
それでも、よかったんだ。
繋ぎとめるものが理想郷だって構わない。
例え、結ばれる未来なんて、超法者のように存在しなくても。
私は今日もまた、悪を裁く。
エデンの、従順な犬となる。
まるで鳥籠のなかの鳥
(エデンに捕らわれた私は、逃げられないの)
*******************
2013.07.11
2013.10.31 加筆