もしもーし。

…平家?

なによ、こんな時間に。

こんな時間に家を出るな、と。

無理なお話ですね。

…気が済むまで戻らないよ。

心配症ね、大丈夫よ。

はぁ?

…そんなに気になるなら、

見つけてごらんなさい。






君との全てが。






空気が肌寒いを越して、もう寒いという時期。
それも、夜なのだけれど。

気紛れで、呑気な私は
今日も気が向いたので、夜中に外出。

これが、夜の公園なんてものはとても素敵で。
初めて来てみた公園だけど、冬の夜っていうのは見晴らしがどうも良くて。

お世話係の様な関係の平家の電話には、
もう耳を傾けない。

…平家には、関わりたくないのよ。

平家も、気紛れな所とかあるから、私に似ているところもある。
でも、中立を程よくこなすし、託された仕事は必ずやる。
責任・任務を重んじる。
それが平家であって。

変態だし、官能小説ばかり読んでいるし…。
本当、何を考えているのかわからない人。

幼い頃から一緒にいるから、つい我侭も言ってしまう。
可愛くない私を作り上げた、可愛くないお兄さん。


私もバカだ。


本当に餓鬼だと自分でも思う。

気を引きたいとか、そんなんじゃないの。
ただ、平家といるのも悪くないだけ。


「本当、貴女は馬鹿ですか」
「わっ…平家!」
「こんな夜中に出かけるなど、まったくナンセンスですよ」
「…平家には関係ないよ」
「仮にも世話係のようなものです。放っておいて叱られるのは私ですからね」


なんで、ここがわかったんだろう。
電話をして、そんなに時間もたっていないのに。
本当、平家は仕事に一生懸命なのね。

少し、妬けるわ。

ブランコに座っていた私は、足を使って少し揺らし始めた。
平家はその横に、程よい間隔をとって立っている。


「非常識な娘ですね、貴女は」


崩さないポーカーフェイスで私を見据える。
その顔でいいの。
その顔でいいから、たまには気をこちらに向けて欲しくて。


「非常識でも構わないわ。…いつでもお嬢様なのは疲れるの」


ふっ、と平家の顔なんか見ずに微笑む。


「貴女に付き合えるのも、きっと私だけですよ。私がいなくなったらどうなさるんです?」
「大丈夫よ。平家は私から離れないわ」
「何処からその確信は来ているんですかね」


顔なんて見なくても、平家の表情くらいはわかる。


「ここまで私に付き合ってくれたのは平家くらいだもの。私は認めているの。…感謝して欲しいものだわ」


あぁ、可愛げない。
どうしてこうなんだろう。
つい意地を張った言い方をして。


「そうですね」


思いもしない返事が返ってきた。
あの平家が、そうですね…なんて。
久々に聞いた気がする。


「私は楽しいですよ、名前さんといるの」
「…平家の口から名前なんて、久々耳にしたわ」
「フフフ、たまにはこんな事もいいですね」


平家といるのは、楽しい。
過去だって、全てに平家がいて。
平家の記憶で色づいている。
それくらい、平家の存在は当たり前で。
なくてはならない存在。
とてもとても大切な人、なのだ。


「…私も平家と行動を共にするの、とても楽しいわよ」
「そうですか。光栄です」
「…私は平家の事を好きかもしれないわね」
「…ほう」
「ねぇ、平家。お世話係もいいけど、一度だけ…今だけ一人の女の子として扱って」
「名前さんからそう言われるなんて。ご用件はなんです?」


平家は、意地悪だ。
私の前だけではどうも態度が違くて。

二人きりの時は、君との全てが蘇る。


「馬鹿、察しなさいよ」


そう言っては、結局私から擦り寄るの。
そう、気まぐれの猫のように。
あなたの前だけよ、素直なのは。
腰に手を回して抱きつけば、久々に嗅ぐ平家の香り。

落ち着く。


「…またムキムキになったわね」
「言い方が失礼ですよ」


クス、と二人で微笑みあえば、ほら、また君との全てが増えていく。








貴方と私の、秘密の口付け

(名前のオネダリは好物なのでね)
(二人きりの時は態度が違いすぎるのよ、平家は)
(人の事は言えませんがね?名前)
(…たまにはいいじゃない)
(フフフ)
(あまり呼び捨てにしないで)
(照れてる貴女も素敵ですよ)
(それ以上言ったら潰すわ)

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