ここが泪の、お気に入りの場所か。いつだか交わした会話を思い出す。

あたしも、ここによく来てたよ、よく寝てた。・・昔の話だけれど。
そうか。お前の長い睫毛がここで伏せられてたんだな。
・・何言ってんの泪、あんた気持悪。

そこはとても居心地がよく、何よりも理由はわからないがとても安心した。


その日は生憎の悪天候で風に煽られる髪が鬱陶しいと嘆いた。
それを泪が綺麗な髪だと言って、あたしが泪の髪はもっと綺麗だと思うけどと返したら照れまくりの泪に頭突きを食らわされてまた浅い傷を負った。

最近どうなの。

あたしたちのところを離れ、新しい場所を見つけた泪に問う。
お互い隠れて少しの間だけ話すことにした理由は特になかったけれど、心のどこかで心配だとか、寂しさだとか、色々考えていたんだろう。
彼女は目を伏せて、楽しいよ。そう呟く。
初めて見る顔に一瞬戸惑いを覚えたがそれもすぐに消えた。彼女は、泪は、元気でやっている。いつか対峙することなど、とっくに感づいているこの状態の中で、あたしたちはそれでも互いに信頼、友情、ライバル心、全てを持ち合わせていた。
どちらもきっと、ずっと変わらない。そう思えた日はきっともうずっと遠い過去だけれど、振り返らない。だって、今もあたしと泪はこの錆び付いた世界でも唯一無二だと胸を張って言えるから。

なに泣いてるんだ。・・泣いてないよ。ただ、「・・嬉しいんだ。あんたとこうして出会えたこと」

今宵もまたあたしたちの思い出の地に足を付け、瞼をゆっくりと閉じる。
違う道を歩き始めて数年、また今年も、君の存在はないけれど、そんなもの必要ない。



自ら操作した携帯電話から、幾度かの機械音が耳元で鳴り響く。




*Happy Birthday to Rui! 2015.9.10

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