たまには素直に



高尾生誕祝


「お疲れ様でっす」
「お疲れ。そういやお前、誕生日なんだって?」
「そうなんすよー。祝ってくれます?」
「お前なら祝ってくれる女の子がいくらでもいるだろ」

 女の子がいくらでも…ね。
 そうじゃない。オレは、あんたに…。

「いいじゃないっすか。おごってくださいよ」
「嫌だよ、轢くぞ」

 オレが祝ってもらいたいのは、ただ一人だけなのに。
 どうしても願いは届かない。
 こんなにも強く想ってるのに。

「いいじゃねーか、おごってやれば」
「大坪…っ!!なんでオレが」
「普段緑間の相手してるかわいい後輩だろ?」
「主将、それ本当に思ってます?」
 そう聞けば主将は目をそらす。絶対、裏がある。
 けどまぁ、助け舟だしてもらってるのは事実だ。
「…大坪がそういうなら仕方ねぇな」
「まじっすか!?」

「…んで素直に…」

 主将が宮地サンに何か言っていたけど、よく聞き取れなかった。

「高尾!!早く着替えてこい。お好み焼きおごってやっから」
 更衣室には緑間がいた。
「嬉しそうだな」
「まーな」
「お前もいい加減にするのだよ」
「…は?」
 突然言われた言葉は、もちろん身に覚えがない。
「なんのことだよ?」
「…見ていてうっとうしいのだよ、二人とも」
「二人?」
「オレは用がある。お前と話している暇はないのだよ」
 最後にムカつく言葉を残して緑間は帰っていった。
 二人…。
 緑間が言った意味がわからないほどバカじゃない。
 ただ、あまりにも都合が良すぎる展開が信じられない。

「高尾ー?」
「はい!!今行きまっす」
 ぐるぐる考えているうちに宮地サンの呼ぶ声が聞こえて急いで更衣室を出た。


「いっただきまーす」
「言っとくけど一枚だけだからな。二枚目からは自腹なー」
 食いはじめたオレに釘をさす先輩。心配しなくてもそんなにたかんねーよ。
 頭の中には、さっきの緑間の言葉がずっと流れていた。
 ちらちら見てると、目があって意味もなく頭を叩かれる。
 この距離感が心地好い。それは確かだけど。

「ごっそーさまっす」
「ったく・・・お前、オレの誕生日おごれよ」
 二人で並んで歩く。
 確かめるなら、タイミングは今しかない。

「宮地サン。違ってたら笑ってください。つーか忘れてください。…オレのこと、好きなんすか?」

「…っ!!」
 先輩の顔が赤く染まったのが、暗闇にもわかった。
「…違っ」
「違う?じゃあなんでそんな顔するんすか」
「違っ…、く、ない」
 手で顔を隠して、小さい声で答える。
 その姿が、かわいくて愛しくて。
「宮地サン、もうひとつだけ誕生日プレゼントください」
 顔を隠す手を掴んで引き寄せ、キスをする。
「!!!」
 動揺とか、いろんなもんが伝わってくる。
 最高の誕生日プレゼントだな。

「オレも、宮地サンが好きです」

 素直になれば、始まるのはこんなにも簡単だった。





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