特別な日は



黒子生誕祝


 なんだか今日はみんなが変だ。
 そわそわしたり、落ち着かない。

「黒ちん、これあげるー」

 言うだけ言って彼が去っていったあとに残ったのは1本のまいう棒。
 お菓子を誰かにあげるなんて珍しい、と喜んでいいのだろうか。
 …そもそもこれはおいしいんですか?
 ネギトロ味と書かれたパッケージをじっと見る。

「ああ、こんなところにいたのか、黒子」

「緑間くん」
 次から次へと、本当に今日は変だ。
「これをやるのだよ」
 渡されたのは、
「おしるこ…ですか?」
「最後の一本なのだよ」
「緑間く…」
「味わって飲むのだよ」
「なんで…」
 話を聞いてください。
 彼も言うだけ言って去ってしまった。
 どうして彼らはこうも人の話を聞かないのだろう。

 この感じだとそろそろ来そうですね。

「黒子っちー!!」

 やっぱり。
「なんですか、黄瀬くん」
「これあげるっスよ
「いりません」
「ヒドッ」
 差し出されたのはサイン色紙だった。
「結構価値あると思うんスけどねー…」
 しぶしぶそれを引っ込める。
「じゃあこれあげるっス」
「…なんですか、それ」
「オタマロっス!!この前ゲーセンでとったんス」
 なんというか…近い未来に似たような人に会う気がします。
「…ありがとうございます」
「当たり前じゃないっスか」

「テツくんテツくんっ」

 今度は桃井さん。
 昼休みももう終わるというのに。
「あのね、これテツくんのために作ったんだよ」
 手元をのぞくと黒焦げの、おそらくクッキー。
「桃井さん、気持ちは嬉しいんですが…」
 言いかけて、顔がキラキラと輝いているのに気づき、言葉を止める。
 ちらっと黄瀬くんを伺えばそこにはもういない。
「後でいただきますね」
 そう言うしかなかった。

 紫原くんにまいう棒。緑間くんにおしるこ。黄瀬くんにクッション。桃井さんにクッキー。
 いったい何がおこっているのだろうか。

 放課後になってもそれは続いた。
「黒子、使うといい」
 赤司くんからは新しいリストバンドだった。
「ありがとうございます。でもいったいなぜ…」
「なんだ、自分で気づいてないのか」
「え…?」

「テツっ!!」

「答えはあいつから聞くといい」
 意味ありげな笑みを残す赤司くんの後ろから青峰くんが来るのが見えた。

「青峰く…」
「テツ、俺からはこれな」
 言い終わると同時に唇を塞がれる。

 あ、そうだ…。今日は僕の…。

「おめでとう、テツ」

 僕の誕生日だ…。

 ぎゅっと僕を包み込む体温に胸が熱くなる。
 自分でも忘れていた誕生日を祝ってくれる人たちがいるなんて。
「青峰くん、ありがとうございます」
「おう」
「…大好きです」
「…おうっ」
 もう一度唇を塞がれる。
 今までで一番幸せな誕生日になる気がした。





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