そうだ、キミと過ごそう


赤司生誕祝

 そうだ、京都へ行こう。どこかで聞いたフレーズが頭に浮かんだ。明日は土曜日で、練習も午後から。神様も味方してくれてるってやつか。思い立ったらそうするのが最善のように思えて、その日オレは部活を休んだ。





 決して近くはない。でも行こうと思えば行けるんだ。京都の地を踏み締めてそう思う。

「すいません、洛山高校ってどう行けばいいっすか?」

 説明された道順を頭に叩き込んで歩き出した。クリスマス前の慌ただしさはどこも変わらないようで、誰も彼もが急いでいるように見える。そんな人達に紛れて洛山に着いた頃には日はとっくにくれていた。

「まだいるかな…」

 敷地に入らなくても、体育館に明かりがついてるのはわかる。問題は中にいるのがバスケ部かどうかってこと。いなかったらどうすっかな。家なんて知らねーし。

《もう練習終わった?》

 気づけ、気づけ、気づけ。終わっててもいいから、会いに行かせて。あまり携帯をチェックしない恋人に向けて祈る。

《そんなこと聞くなんて珍しいな。ちょうど終わったところだが何かあったか?》

 手の中の振動に気づいてその文面を読むと、すぐに話し声が聞こえて顔をあげた。見覚えのあるジャージ、そして集団の中に鮮やかな赤い髪の毛。

「征ちゃん!」

 考える前に声が出て足が動く。駆け寄ると赤司は少しだけ目を見開いた。

「和成…どうしてここに?」
「来ちゃった」
「来ちゃったじゃないだろう。…驚いた」

 驚いたと言いながら冷静な赤司にわずかな悔しさを覚える。

「赤司ー。オレ達先行くねー」
「ああ、お疲れ様」

 一緒にいたバスケ部の集団を見送ったあと、さて、と微笑んだ。

「会いに来てくれたのは嬉しいけど、練習はどうしたんだ?」
「だって、今日は征ちゃんの誕生日だろ。会って祝いたいって思ったんだよ」
「…………」

 返事がない。迷惑だったか、練習を休んだことを怒られるか。

「征ちゃん……?」

 おそるおそる声をかけると、赤司の表情はさっきよりも驚きに染まっている。

「そうか…誕生日は一緒に祝うものなのか…」
「へ?」
「いや、誕生日を誰かと一緒に祝うだなんて、しばらくなかったからな」

 すごく嬉しいよ、と笑ったその顔を見ただけで、京都まで来てよかったと心から思った。

「征ちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとう、和成」
「ケーキ買いに行こっか」

 自然と手が繋がり、指が絡まる。普段は人前でいちゃつくのを嫌うのに珍しい。「誕生日だからいいと思ってね」なんて照れ隠しのように言う赤司は可愛かった。



そうだ、キミと過ごそう


(今夜は泊めてね)(明日は練習に間に合うように帰るんだぞ)





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