君の季節
洛山に負けて、青春が終わりを告げてから数ヶ月。それはあっという間だった。
気づけば受験が終わって、特に問題なく合格し、そしてこの日を迎えた。
「卒業生の皆さんは―…」
壇上では校長が面白くもねえ話を続けている。
オレはふぁ、と欠伸をして、壁にかかっている大きな時計を見上げた。
式終了後、部室に集合っていうのは代々行われてきた連絡で、オレもそうやって先輩方を見送っている。けれど、自分が見送られるということにどうしても実感がわかない。
退屈な式が終わって、教室で別れを惜しんで。そろそろ部室に行こうかと教室を出たとき、か細い声が耳に届いた。
「あの…っ、宮地先輩、少しいいですか…?」
俯き加減に立っている女の子。どうやら後輩らしい。
「…好きです。付き合って下さい」
人気のない場所に移動したあと、彼女は簡潔にそう切り出した。
緊張のせいか声は震えて、俯いていてもわかるほどに顔は赤くなっている。
「…悪いけど、オレあんたのことよく知らないし」
そう言うと、その子は泣きそうな顔でオレを見上げて、無理やり笑ってみせた。
「ですよね…、伝えられただけでも満足です」
「ごめんな、…ありがとう」
その子に背を向けて歩き出す。頭には、一人の後輩が浮かんでいた。
卒業するってことは、見てるだけでいいって言い訳が通用しなくなる。
たとえ届かずとも、どこかで自分の想いに区切りをつけるべきなんだ。
部室に行くともう皆揃っていて、オレが最後だなんて笑われた。
花束を渡されて、監督から一言とか、卒業生から一言とか、定番の流れに添っているうちに、高尾の姿が見えないことに気づいた。
とは言え、その場を抜けるわけにはいかない。
「お世話になりましたッ!!」
新部長の号令で部員が一斉に頭を下げる。なかなかに壮観だ。
込み上げるものがないわけじゃない。けれど冬に充分泣いたから、今は笑う。
列になって見送られて、解散してから高尾を探す。高尾は体育館にいた。
「先輩の最後見送らねえとは、いい度胸だな。轢くぞ」
いつもの調子で声をかければ、パッと振り向いたその顔は、目元が少し赤くなっているように見えた。
「最後って…死ぬみたいじゃないっすか」
すぐに俯いて顔は見えなくなる。けれど、その声もわずかに震えているようで。
「お前…泣いてんのか?」
「…泣いてないっすよ」
距離を詰めて、上を向かせる。
「やっぱ泣いてんじゃねえか」
目元が赤く見えたのは気のせいじゃなかった。今も、オレを見る目元は潤んでいる。
「だって…!もう学校で宮地さんとすれ違うこともないんだって…、そう思ったら…」
最後まで聞くことはできなかった。
掴んだ腕を引き寄せてキスをする。
「……っ!」
唇を離せば、高尾は驚いた顔で、言葉を忘れたかのようにオレを見た。
「謝らないからな」
「……宮地さ…」
「お前が好きだ」
自分の気持ちに区切りをつけよう。たとえ関係が崩れても。
「宮地さん…っ」
ぽろぽろと高尾の目から涙が溢れる。
「オレも……宮地さんが好き…っ」
告げられた言葉に、感情が爆発した。
きつく抱きしめて、何度も貪るようにキスをする。
「……っ、は…」
浮かされたような目でオレを見るから、その目に理性が飛びそうになる。
「来いよ」
手を引いて、早足で帰路を急いだ。
幸い、両親は共働きで、家には誰もいない。
―ガチャンッ。
鍵をかけると、すぐに高尾を抱きしめ、性急に口づける。
「ん…、っは……ぁ…」
唇を離すと、銀糸が繋がって見えた。
「…いいよな?」
耳元で低く問いかけると、高尾は顔を真っ赤にしながら、こくりと頷いた。
「ぁ…、んァ……っ、みや、じさ…ッ」
場所をオレの部屋に変えて、高尾に触れる。
胸の突起を摘んで、舐めて、軽く噛んで。もどかしそうにしている下半身に手を伸ばせば、過剰じゃないかと思えるほど身体がはねた。
「…ゃあッ!!…ん、は……」
スラックスの前をくつろげて、高尾の性器を取り出すと、それは勢いよく上を向いた。
口に含んで、先端を舌でえぐるようにすると、呆気なく熱を放った。
咥内の白濁を指に絡めてから、高尾の後孔に這わせる。
「……ぅ…、っつ…!」
固く閉ざされていたそこに指を侵入させると、痛みのせいか、高尾は顔をしかめた。
「悪い、痛いよな」
謝りながらも、手を止めることはできそうにない。
ふるふると首を横に振っているけれど、痛がっているのは明白だ。
せめて、早く快感を与えてやろうと、指を内部で探るように動かせば、ある一点を掠めたときに高い声があがった。
「ここか?」
「……んあッ…、な…に、そこ…っ…!」
見つけたその部分を、何度も押してやると、きつく締まっていたそこは、徐々に柔らかくほぐれていった。
指を増やして掻き回し、充分にほぐれたところで、指を引き抜いて自分のものを宛がった。
「…力、抜けよ」
ゆっくり入り込むと、ちぎれるんじゃないかと思うほど締め付けられ、なかなか奥まで入らない。
なだめるように高尾の性器を手で弄りながら、少しずつ腰を進める。一番太い部分が飲み込まれると、そこからは一気に奥を穿った。
「…は、ぁ、……やじさ…っ、宮地、さ…ッ!」
オレを呼ぶ高尾の声に、一層昂ぶる。
「高尾……っ」
我慢はできなかった。がっついてると自分で思いながらも、指で探り当てた一点や、奥を突く。
「みや…、さ…ッ、ふぁ……も、イく…っ」
「いいぜ、イケよ…っ」
「や…ッ、一緒…が、いい…っ!」
その言葉が、顔が、声が、あまりにも可愛くて、一瞬動きが止まる。
「一緒に、な。先にイッたら、轢くぞ…っ」
身体のぶつかる音と、ぐちゅ、という水音。それと、高尾の喘ぐ声。耳からも性感は高められていく。
「ふ…ァ、みや…さ…っ!」
「……和成…っ」
大きく脈打ち、再び白濁が散ったのと、オレが高尾の中に熱を吐き出したのはほぼ同時だった。
高尾はそのまま意識を手放す。
腕の中に高尾の体温を感じることが、これからの関係が、夢のようだと思った。
君の季節(お前、同じ大学来いよ)(宮地さん頭いいから無理っすよ)(落ちたら轢く、いや刺す)(横暴!)