選択肢は猫一択


Happy halloween !!


 教室中に甘い匂いが広がっていた。市販から手作りまでたくさんのお菓子を交換する女の子達。

「孤爪くんもいる?」
「あ…ありがとう…」

 輪の中に入ってなくてもくれるんだから女の子ってすごい。これ、虎に見つかったらうるさいだろうな。





「由々しき事態だ!!」
「山本うるせえ」
「よくそんな言葉知ってたな」

 虎の叫びは三年生にばっさりと切り捨てられた。

「ひどくないすか!?」
「はいはい、で、どうしたって?」
「烏野は潔子さんからチョコ貰ったらしいんすよ!」
「ハロウィンで?」
「そうみたいです」
「別にいいだろ、それくらい。だいたいハロウィンって自分で貰いに行くんだろ」

 女子にトリックオアトリートって行ってこいよ、なんて笑う夜久さん。虎は固まっていた。

「どうやって女子に話しかけるんすか…」

 完全に夜久さんに遊ばれてる。近くにいればくれたのに。

「研磨も欲しいよな!」

 ちょっと待って、俺にふらないで。クロこっち見てるし。

「いや…だって俺教室で貰ったし…」

 ほらやっぱりうるさい。クロの視線も怖いんだけど。

「おい、研磨」
「何…?」
「トリックオアトリート」

 あ、やばい。本能がそう告げた。ニヤッと笑うクロなんて、何か企んでるに決まってる。貰ったお菓子は食べちゃったからあげるものなんてない。

「お菓子ないんだけど」
「じゃあ、いたずらだな」

 ああ、すごく楽しそう。もう逃げられないのは明白だった。





「コレ、いつまでしてればいいの…?」

 いわゆる猫耳を乗せられた頭が、違和感を訴える。携帯のカメラを俺に向けて構えたクロは、当然のように言い放った。

「家に帰るまでに決まってんだろ」

 何言ってんの。バカじゃないの。こんなのつけて外になんか行けないよ。どれだけ文句を言おうとクロは折れてくれない。

「恥ずかしいから…」
「帰りは暗いから見えねえよ」

 気づけば虎とか夜久さんまでカメラを向けている。

「嫌だって…。お願い…クロ」
「…それ反則。やっぱ外はいいわ。帰ったら覚悟しとけよ?」

 もしかしてクロは最初からこれを狙ってたんじゃないだろうか。そう思うくらいに、一番いい笑顔をしていた。



選択肢は猫一択


(変なことしないでよ?)(変なことって?)(……知らない)






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