夏だから仕方ない




 その日はひどく暑く、蒸していた。窓を開け放していても、入ってくるのは生温く気持ち悪い空気ばかり。
 ベッドに入ってしばらくたっても眠れずに、寝返りを繰り返していた。

 今何時だよ…。

 いつまでも続く暑さに嫌気がさして、時間を確認しようと携帯に手を伸ばしたとき、図ったかのようにランプが点滅し、メロディが流れ始めた。
 ディスプレイに表示された、幼なじみで恋人の名前を確認する。

「どうした、研磨」
『クロ……暑い』
「そりゃこっちも同じだよ」

 言葉の少ない研磨が言わんとすることを、探し当てようと模索する。

『眠れないんだけど』
「暑いからな」

 ボソボソと喋る恋人の声が耳元で聞こえてると、いろいろとまずい気分になってくる。

『はぁ…もういいや…』
「ちょっと待て、研磨。眠れるようにしてやるよ」
『え?』

 小さく呟いて電話を切ろうとした研磨を止める。
 俺も健全な男子なわけで。

「大丈夫だって、な?」

 ちゅっとリップ音を響かせると、何となくわかったのか、うろたえる気配が伝わってきた。

『え、何…?嫌だよ…』
「嫌じゃねぇだろ?」

 誘うように電話口で囁いてみせれば、研磨のため息が聞こえる。
 ここで嫌だって言われたら俺がきつい。

「研磨」
『…はぁ……クロのせいだ……』

 責めるような口調のその声は、どこか艶っぽかった。
 パジャマ代わりのハーフパンツから、すでに頭をもたげている性器を取り出す。

「研磨、自分の触ってみろよ」
『ん…クロのバカ…』

 文句を言いながらも、言われたとおりにしているようで、暑い吐息が聞こえる。

「もう勃ってんだろ?」
『…ん、はぁ……勃って、るよ……』

 小さくて聞き取りにくいが、こういう時の研磨はいつもより素直だ。

「いつも俺がするみたいに手、動かせ」
『…そんなの…わかんないし…』
「わかってるだろ。今動かしてるもんな」
『…っ、ぁ……』

 きっと研磨はベッドで丸くなって、顔を真っ赤にしながら自分のを弄ってる。電話でも目に見えるようにわかる。

「先端、どうなってる?もう濡れてるだろ」
『…ん…ゃ、は…ッ』

 言われたとおり先端に触れたのか、くちゅという水音が聞こえた。
 自分も同じように性器を弄ると、さっきより硬度は増して、先走りを零している。

『ね…クロ…、も、イキた……っ』

 懇願するような、掠れた研磨の声が俺を煽る。
 目の前にいたら、涙目で俺を見上げてるんだろう。
 自分で弄ってるんだから、許可なんてとらなくてもいいのに。研磨はそこまで頭回ってないな。

「いいぜ、イケよ…っ」

 許可を出して、自分の震えている性器を追い立てる。

『ぁ、ん…、あッ、ふ…、ゃああ……ッ!!』

 研磨の達した声を聞きながら、自分も熱を吐き出した。

「研磨…」
『はぁ…ッ、は…』
「いれてぇな」
『…っ、クロのバカ…っ!』

 やめときゃよかった。研磨に触りたくなる。

「でも眠れそうだろ?」
『知らない、寝る…っ』

 一方的に電話を切られる。

 後始末をしてると、独特の疲労感が身体にのしかかる。俺も眠れそうだ。




夏だから仕方ない


(今日は最後までシようぜ)(嫌だ、暑いし)






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