濃くて甘いハアト


Happy Valentine !!

 どこにいてもチョコの匂いがするその日、わかっちゃいたがチョコの匂いを纏って歩くそいつに吐き気がした。

「あっ、岩ちゃ〜ん!」

 気持ち悪いほど整った笑顔。目の前にいるんだから、そんなに大きく手を振らなくたって見えるっつーの。

「何だよクソ川」
「いきなり悪口とかひどっ!」
「だから、何の用だよ」

 いかにも手作りです、みたいなラッピングが覗く紙袋ぶら下げて、そしてその袋を掲げた。

「ほらこれ!バレンタインチョコだよ!」
「はっ…?お前の手作りか?」

 女子に貰ったんじゃなくて、自分で作ったっていうのか。誇らしげに自慢げに紙袋を差し出して、ガキの頃みたいな笑顔を浮かべる。

「そうだよ、当たり前デショ」
「そういうのって女がやるんじゃないのか」
「だから、女“側”の俺がやってるんじゃない」

 臆面もなくさらっと口にしたその言葉に、むしろ俺のほうが恥ずかしくなって目を見ずに紙袋を奪い取った。

「ちゃんと食べてよネ。お返しも期待してるよ〜」

 チョコの匂いを纏わせた及川。ほとんどは及川自身が貰ったチョコレートの匂いだろう。その中に俺のためのチョコレートの匂いが混ざってるんだと思うと、くだらないとは思いつつも優越感を覚える。

「…お返しは牛乳パンでいいか」
「えーっ、どうせならもっといいモノにしてよ」
「お前牛乳パン好きだろ」
「そうだケド…情緒ってもんがさー!」

 なんだか腹がたったから放課後、覚えとけよ及川。



濃くて甘いハアト


(ちょっと岩ちゃん!何の恨みがあるのさ!)(何となく)(ひどい!)






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