お菓子で遊ぶのもほどほどに
花松要素あり 今日はポッキーの日なんだと。だからポッキーゲームをしようと。そう言い出したのは及川で、例によって妙にテンションが高かった。
「ほら、やろうよ!せっかくポッキーの日なんだからサ〜」
何がせっかくなんだと問い詰めたくなったが、こいつのことだ、適当にごまかすだろう。
「まさかできないとか言わないよね?」
「わーったよ、やりゃいいんだろ!」
断っても無視しても無駄なんだからさっさとやっちまおうなんて考えが浮かぶあたり、俺は及川に染められているのかもしれない。周りも周りだ。花巻と松川、国見まで面白そうに見てやがる。
「ほらほら早く!」
ポッキーの片端をくわえて及川が促す。突き出された端をくわえると、及川は食べ進め始めた。おい、ちょっと待てよ。俺はポッキーゲームのルールなんて知らねえぞ。心の叫びが誰かに届くわけもなく、そのうちくわえたポッキーは折れた。
「折った!岩ちゃんの負け〜!」
「あーあ、岩泉の負けか」
「及川が負けたら、からかってやろうと思ってたのに」
無責任に言いたい放題の花巻と松川。他人事だと思って…。お前らもやってみろよ。
「及川が勝っても面白くないデショ」
「ちょっと!勝ったのにこの仕打ちひどくない!?」
ギャーギャー騒ぐ及川を通り越して花巻にポッキーの箱を投げた。
「何?」
「お前らもやれ」
「お前らって俺と松?」
「それ以外に誰がいんだよ」
「冗談、なんでこんなとこで」
「いいから」
ため息をついて花巻が松川を振り返る。
「だってサ。やる?」
「嫌だっつってもお前もう乗り気なんだろ」
「正解」
花巻のくわえたポッキーを松川がくわえて始まったそれは、どちらも折ることなく、そのまま唇が重なった。あまりにも自然すぎて及川が感嘆の声を漏らすほど。金田一なんか真っ赤になってやがる。
「…あれだよ岩ちゃん!マッキーと松つんを見習ってよ!!」
それはキスされたかったって解釈でいいのか?いいんだよな?視界の端に、調子にのった花巻が松川に怒られてるのが映った。
「うるせえよクソ川」
引き寄せて噛み付くようにキスをする。ここが部室だとか、他の奴らもいるだとか、そんなこと全部頭から吹っ飛んで、ただ舌を絡めて唾液を混ぜて咥内を荒らした。そのうち苦しくなったらしい及川が俺の胸を叩いて、やっと唇を離すと目の前には赤く染まった端正な顔。
「岩、ちゃん…」
みんな見てるのに、とかごちゃごちゃ呟く及川に一言だけ。
「ポッキーゲームなんて言い出したお前が悪い」
お菓子で遊ぶのもほどほどに(キスしたいならそう言え)(それとこれとは違うの!)