[今日も明日も明後日も]
【卒業式前日 side大我】
「火神は良いよなあ。そのボタン、明日は女子にめちゃくちゃ取り合いされるわけだろ?くー、羨ましい!」
卒業式の全体練習も終わり、さっさと姉貴達のいる家に帰ろうと鞄を取ると、クラスの奴に声をかけられた。
(ちなみにコイツは物好きなのか、帰国子女だからか避けられがちな俺によく話しかけてくる。)
「なんだよニヤニヤしやがって。つか何、ボタン?こんなのに何か意味あんのか?」
「あー、火神は帰国子女だから知らなかったのか。…実はな、この第二ボタンにはな。特別な意味があんだよ!」
そう言いニヤけるクラスメイトに少し興味を持つ。なんだ、特別って。日本には変わった風習でもあんのか?
「特別…?」
「そう。それはな…」
【卒業式当日 side陽子】
「大我、見て見て〜♪このアレックスからもらったプリザーブドフラワーのコサージュ、似合うかな?」
今日は大事なたった一人の弟、大我の晴れ舞台、卒業式!
…なんだけど。お姉ちゃんと色違いのコサージュは綺麗で私なんかに似合ってるかはともかく(ちなみにお姉ちゃんはすっごく似合っている!)、このスーツの中のインナー派手じゃない!?場違いじゃない!?
綺麗にスーツを着こなしているお姉ちゃんを写真に収めながら、自分の姿を見ては「大我のため…大我のため…」とさっきから呪文のように繰り返す私はさぞかし不気味だろう。
…そう。そんな私が念を送る本人、大我はさっきから時々上の空で。
お姉ちゃんの格好にはちゃんと反応を示しているものの、なんだか様子がおかしい。
緊張、してるのかな…?
大丈夫だよ、大我。そう声をかけようとしたらやけに緊張した大我の声がリビングに響いた。
「…あ、姉貴!!」
よく見たら耳まで真っ赤にさせて。大我は私達二人を側に呼んだ。
「い、今のうちにやっとく。手ぇ出して」
何なのだろうとお姉ちゃんに目配せしながら片手ずつ出すと、そこに転がってくたのは一つのボタンだった。
「ん…ボタン…って大我これ!?」
「ま、まさか第二ボタン!?」
さすがに硬直する私達に大我は目線を私達から外しながら「あ、ああ…」と肯定した。
「意味分かってるの大我?これは学校で大切な人にもらわれるもので…「だからだよ」へ?」
「だから、姉貴達二人にあげるんだ。もらって欲しいんだ。なあ、だから受け取ってくれよ?」
「…っ!」
こんなことを最愛の弟から言われて喜ばない姉なんていないと思う。
お姉ちゃんの方を見れば、お姉ちゃんも泣きそうな顔をしていて。
「「タイガ〜〜〜!!!」」
二人で思いっきり弟に抱きついたのであった。
…ねえ、大我。
実はね、私今日までボタンのこと思うと寂しかったんだ。大我もいつかは誰かを好きになって恋をする。
そのきっかけになるかもしれないボタンがなんだか不安で。
こんなこととても直接には言えないけれど。
もう少しだけでいいから。
私達二人だけの弟の、火神大我でいてね?
〜Fin〜
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