独立宣言 (芹沢×かなで)




「た、助けてください…!」

かなでは芹沢に助けを求めた。

土岐の運転で強制連行された温泉旅行はこれで2回目になる。


「おい地味子、何芹沢の後ろに隠れてんだ」

「あかんよ小日向ちゃん。早うこっちおいで」


相変わらず神南組のアプローチはすごい。
浴衣姿のかなでをそばに置きたくて東金が手を引こうとした瞬間、芹沢がそれを阻止した。

「部長、副部長。小日向さんが怖がっているでしょう。もう少し考えたらどうです」

呆れたようにため息をつく。
けれど、それが自殺行為であることは芹沢自身が一番よく知っている。

「ほう、言うじゃねぇか芹沢」

「そないなこと言いながら、ほんまは芹沢クンも混ざりたいんやったりして…」

土岐はニヤリと口角を上げる。


「そんな訳──…」


言いかけて、止まった。

背後にいるかなでが、芹沢の袖をぎゅっと掴んだからだ。

驚いて振り返ると、不安そうに眉を下げる。

「……っ」

東金は彼女を地味子と呼ぶけれど


(そんな表情されたら)


可愛く見えてしまうのだから、心臓に悪い。



「なんだ宣戦布告か?」


東金が不機嫌そうに呟く。
芹沢は掴まれた袖をそのままに、かなでの手首を引いた。


「つまらない事を言わないで下さい」

「ほんなら、なんやの?その手」


土岐の鋭い指摘はあからさまに不服の色を含んでいる。

触れ合う手に視線を留めたまま赤くなったかなでの頬に、芹沢はひとつの希望を持った。





「独立宣言です」





踵を返す身体に沿って

ひらり、

ふたつの袖が翻った。





+Fin+



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