あ、駄目だ。こうなると何も伝わらない。
声が届かないって、こんなにむなしかったっけ。
コンナニモ、オイテイカレタヨウナカンジダッタッケ。
気付くと、意識がすうっと遠ざかっていった。
「朱鳥。」
涼兄ちゃんがそこに、いた。相変わらずのぼさぼさ頭。
背が高くて、でも、適度な厚みもある。
簡単に分類すると、カッコいい部類に入るだろう。
「涼兄ちゃん?」
「朱鳥。おまえ、生きているか?」
「え…。」
特に興味の無さそうな声で、視線はうちじゃなくて、数センチ横に固定されている。
「生きているかるか?って……。どーゆーこと?」
「また、人形になってるんじゃないのか?」
「にんぎょ、う……?」
涼兄ちゃんは、そんだけだ、というように笑ってゆっくりと歩き去った。
「ちょっとまって!!涼兄ちゃん!」
………………。
目を開けると、そこは大きなベッドの上だった。
やっぱり、夢か。そうだよね。なんか、できの悪い小説みたいだったから。
「あーちゃん。」
聞き覚えのある声のもとへと顔を向けると、
ツヤツヤの茶色の髪のポニーテールが印象的な、
宮田 花蓮(みやた かれん)がいた。
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