「腹減った」

 まだ3時間目に入ったばかりだった。いつもならもう少し持つはずだった。今日の朝、寝坊して朝食を取ってないせいもあり、また1時間目が体育という不運。いや、思いっきり楽しんだんだけど。

「ね、早弁していい?」
「無理。カメにバレる」
「ちぇ」

 日本史の授業はプリントで進む。穴埋めをやらせながら軽く説明を入れて、ペースの速い授業だ。しかし、比較的先生が黒板に向かっている時間が長いのが、リラックスできる点だ。
 さすがに、カメこと亀田先生は弁当の匂いには気付くだろう。そしたら残りの40分、俺たちは機嫌が悪くなったカメに付き合うことになる。それを周りの奴らは恐れているようだった。

「ほら、これで我慢してよ」

 後ろから伸びてきた手が肩にチョンと乗って、金の包みを渡される。振り返ると、彼女はぷっくりとした唇で「キャラメルチョコレート」と言った。どぎまぎした。

 もったいないと思いながらも、口に入れる。ほんのりと熱を感じて、もしかしたら彼女の手の温度かも、なんて思った瞬間に溶けて消えた。
 甘い、キャラメルの後味はまだ残っていて、欲しくなる。どうやら依存性があるらしい。

 俺はその麻薬を貰うために振り向いたが、すぐ向き直る。俺は自然な流れで、板書を取る作業に戻った。溜め息をついて、横目で彼らを観察すると、次々に麻薬は溶けていった。依存症は拡大中のようだ。

 後味がまだ消えない。俺はもう一度、深い溜め息をついた。

081007
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