同じじゃない。全く違わないなんてある訳がない。ただ似ていた。そっくりだった。

「なーに見てるのかな」
「ナオト、服の趣味変わった?」
「さあ。そんなつもりはないけど」

 そうだったか。ナオトはもう少し、ラフな感じだったと思う。お堅そうなジャケットなんかより、パーカーやダウンを羽織ってた。そもそもお洒落に興味すらなかったはずだ。
 俺はテレビゲーム片手に寝転がって、着替えるナオトを見ていた。この様子だと出掛けるみたいだ。俺に何も言わないことから、あの女のところだとわかってしまった。ほら、俺の目を気にして、クリスマスに増えたネックレスを着けずにポケットにしまってる。そんなことしても、左手の指輪が、俺に全て主張しているように見えた。

「俺もマサトくらい髪切ろうかなあ」
「ダメ、もっと伸ばせ。俺と被るだろうが」
「いや、でもさあ、鬱陶しいんだって」
「じゃあ坊主ね」
「ちょ、無理! あいつ嫌がるってか笑われるー」

 俺の指が止まる。しばらく頭がフリーズして、すぐさま俺の分身は倒され、テレビ画面は黒くなった。真ん中に小さく表示された、ゲームオーバーの文字。その向こうに、ナオトの焦った顔が見えた。

「ほら、遅刻するから。行けよ」
「え、あ、うん…………わっ」

 ポケットに手を突っ込んで、クロスのネックレスをナオトの首に回した。バカにもほどがあるだろう。もし俺だったら、絶対嬉しくて仕方なくなって、ナオトに自慢してやるのに。気にしなくていいのに。気にされると、泣きそうになるから。

「……負けたよ」
「え?」
「なんでかな」

 確かに初めて呼吸したときは一緒だったんだ。身長も体重も、髪型も服もそれからずっと同じだった。でも、もう俺達は間違われなくなった。だから、ナオトは俺より服をこだわって着たっていいし、被るからって髪を伸ばす必要もない。
 性格だってこんなに違うのに、どうして変なところでまた繋がってるんだろう。昔よく遊んだ電車のおもちゃとか、二段ベッドの場所取りとか、色違いのスニーカーとか、つまりは全部そういうことなんだ。

「……今でも好きなんだね」
「うん。でももう少し経ったら、自慢話でもなんでも聞くから、な」
「ありがとう。兄ちゃん」

 にこりと笑顔を見せて、扉が閉まった。テレビゲームの残念そうなBGMが部屋を埋め尽くしている。
 俺にないものをナオトは持っていて、それをあの女が見つけたのだろう。俺ではなく、ナオトじゃないとダメなんだ。ナオトだってそうなんだろう。
 俺も彼女じゃないとダメなんだなあって、しばらくして渇いた涙で気付いた。俺らはそんな気持ちまで、悲しいくらいそっくりだった。

090122

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